狩野川台風再来

 なんか調子悪くて、出かけそこね。新しい薬でジンマシンも抑えられたかと思ったら、別の場所に出てるし。思ったより天気も悪くて、結局、一日引きこもり。その割に、読書も進んでないんだよねえ。集中力も欠けているなあ。


 昨日、天気予報で狩野川台風を引き合いに出していたけど、本当に再来になってしまった感があるな。高潮や暴風被害に目が行っていたけど、雨台風だったのかよ。狩野川は、放水路の建設もあって、氾濫を押さえられたようだけど。多摩川相模川は、氾濫確定。荒川が氾濫するかどうかが問題だな。荒川が氾濫すると、ゼロメートル地帯が、長々と水に浸かることになりかねないが。
 いやしかし、上流部に半日豪雨が降り続いたら、どれだけ治水対策をしていても、氾濫は免れないよなあ。箱根は1000ミリだっけ。富士山から秩父山地あたりまで、同じくらい降り続いているし。むしろ、荒川にしろ、多摩川にしろ、破堤が起きていないだけでも頑張っている感があるなあ。
 富士山も、半日強い雨が降り続いていたし、明日の朝になってみたら、登山道だの、沢だのが、派手に崩れていそう。つーか、三重県から東側は、どこもかしこも水害だらけだな。千曲川の氾濫、中小河川や内水氾濫はどこもかしこも起きていそうだし、東北方面でも河川氾濫が起きているようだ。
 昨年の西日本大水害並、あるいはそれ以上の広域災害となりそうだなあ。


 ヤフーの河川水位情報がアクセスしにくくなってきたので、ここらあたりで、情報収集は打ち切り。


 東京のゼロメートル地帯で水害の危機か。生きているうちにそんなことがあるとか、考えなかったなあ。まあ、それを言うなら布田川断層帯地震も、生きているうちに体験することになるとか考えもしなかったけど。
 土屋信行『首都水没』では、高潮や地震利根川の氾濫などが言及されているけど、その前に荒川の氾濫が来るか。本書で指摘されている東京の水害への脆弱さが、現実の物となろうとしている…
 利根川氾濫のカスリーン台風再来にならなかったのが幸いか。
taron.hatenablog.com

首都水没 (文春新書)

首都水没 (文春新書)

三田誠『ロード・エルメロイ2世の事件簿 2:case.双貌塔イゼルマ(上)』

 ライネス視点のお話。このシリーズ、ロードの周辺の人が語り部で、本人はブラックボックスのままなのか。そりゃ、名探偵の一人称視点は難しかろうけど。


 「美しい人間」を作り上げることで、根源を目指してきた魔術師の家系イゼルマ家。その家の黄金姫・白銀姫のお披露目の社交会に招かれたライネス。敵対派閥に属するイゼルマ家ということで、護衛代わりにグレイを連れて、イゼルマ家の双貌塔に赴いた彼女は、そこで黄金姫から亡命を打診される。しかし、翌日に交渉に彼女の自室に赴いたライネスは、そこで黄金姫のバラバラ殺人の惨状を目にすることになる。
 さらに、自らの疑惑を晴らすために捜査を買って出たところ、黄金姫の侍女カリーナの殺害直後の場面に行き会い、疑惑を深めてしまう。
 そこに、ロード・エルメロイ2世が登場。事件を自分の預かりにする。
 四苦八苦しながら事件の真相に迫ろうとする彼。しかし、何やら青崎橙子やロード・バリュエレータも怪しい動きを見せ、第三者アトラム・ガリアスタも殴り込みをかける様子。混迷の度合いを深めることになる。


 圧倒的な「美」というのは、そりゃ、魔術的なものだよなあ。本当に、そのようなものがあるかどうか知らないけど。
 つーか、言葉にならない美を、あっさりと伏せ字にしてしまうアイデアが、一番のトリックのような気がするなw
 これは映像化が無理そうだなあ…


 何か忘れているのかとつぶやく橙子やライネスが見つけた灰が、伏線なんだな。読んだ時点では意識していなかったが。

県立美術館感想

 昨日の続き。以下、三つの展示会をまとめて。
 そういえば、狩野川台風って、なんかひどくて、あちこち洪水があった台風ぐらいしか知らないな。

熊本県立美術館「美術館コレクション:第2期:名作浮世絵の世界」

 熊本城特別公開の行列を目前にして、急遽入館。
 タイトルにあるとおり、熊本県立美術館が所蔵するコレクションをまとめて紹介する企画展。寄贈された今西コレクションから、肉筆浮世絵とその前後を占める作品をまとめて紹介する。
 しかしまあ、誰にも見せることなく、普通のサラリーマンが一生かけて集めたコレクション。しかも、偏りなく、満遍なく肉筆浮世絵を収集した。コレクター魂がすごいなあ。


 個人的には、江戸美人画に興味が無いので、前史と位置づけられる風俗画や後半のさまざまなテーマの作品に興味が行く。
 写真撮影可ということで、興味を引かれた作品は撮影して、それを元にまとめを書いている。残念ながら、「著作物に転載」は禁止だそうで、ここには載せられないが。
 犬追物図屏風や遊船図、橋上群衆図あたりの、山ほど人間が出ている絵が楽しい。遊船図は、その名の通り、船遊びの図。屋形船で遊んでいる人々がいる一方で、料理は手前側の船に炉を設置して出すんだな。昔風の包丁術で切っている姿とか、すり鉢で何かすりつぶしているところが、当時の料理法をうかがわせる。
 橋上群衆図は、川開きの花火の時の両国橋の姿。橋の上の群衆が満杯という感じで。手前で手すりにもたれてスイカを食べている兄ちゃんに目が行く。


 後半のさまざまなテーマの作品では、「松本幸四郎二木弾正図」や「鍾馗図」が好き。これらは、展覧会の紹介ページにも掲載されている。
 あとは、「美人目隠し達磨図」の「これこれにょほほ」とか言いながらにやついているような顔の達磨さんが楽しい。
 あるいは、花魁と禿がかたまってお昼寝中の「風流四睡図」が微笑ましい。

熊本県立美術館「生の芸術 Art Brut(アール・ブリュット) 展覧会Vol.5」

 講堂で開かれている、障害者の人が作った作品の展示。
 入り口そばに展示されている、自閉症の人が紙に切れ目を入れた作品がすごい。細かく細かく、紙を裂いている。レースみたいな感じになっていて、思わず目を引きつけられる。


 あとは、奥の方に展示されている切り絵のお二方が、安定した出来。残念ながら、お名前をメモしていなかったのだが。紐や布を使った切り絵が、ぱっと目を引く。

熊本県立美術館細川コレクション展示室「細川コレクション2:大名細川家の歴史と美:細川斉茲と絵画」

 別棟、細川コレクション展示室にて。二度目。
 しかしまあ、疲れているときとフレッシュなときでは、感受性がずいぶん違うのだな。自分でもびっくりだ。だいたい、細川コレクション展示室に入るときは、ダブルヘッダーで消耗した後なのだが、こうも違うものかと。


 とりあえず、細川月翁の「墨蘭図」がけっこう好き。
 あと、谷文晁「東海道勝景図」と杉谷行直「富士登山図巻」は、巻き替えで、前期と違うところが見られた。
 前者は、大井川の渡しの光景。広い河原に、細い流れが幾筋も。現在、航空写真で見たときと変わらないんだなあと、当たり前ながら感心。つーか、静岡の川って、他と違って、広い河原に細い流れの川が多いんだよな。
 後者は、富士山頂上と砂走。お遍路さんが、砂地を滑り降りている?姿が印象的。滑ってるのではなく、単純に砂煙がひどいだけかもしれないが…


 前期から予告されていた、山中神風の「説話図屏風」が展示。個人的には、もう一つの「老梅図屏風」の描写が好きかな。ゴツゴツした、老いた梅の木に、すっと伸びる若芽と花。淡い色彩が、しみじみと。

熊本城あちこち

 伝統工芸館から二の丸あたり。


 五間櫓下の石垣。ずいぶん草が伸びてる。




 戌亥櫓東の石垣。セイタカアワダチソウ?が繁茂しまくっている。



 熊本県伝統工芸館入り口から見る平櫓。解体中? しばらく来ないうちに、足場が組まれているが。
 歩道が塞がれて、通りにくくなってる。


熊本城特別公開

 熊本城の本丸の特別公開が始まったので、早速、行ってきた。日祝日は混みそうなので、平日にも開いている14日までがタイムリミット。ということで、快晴の本日をチョイス。12時半頃二の丸に着いたときは、入り口にずらっと並んでいて、速攻で諦めたが、1時間ほどたったあとでは、そこそこの人出になっていて、助かった。平日の下通、上通程度の混雑具合かな。
 ついでに、県立美術館の展示も見てきたので、足が疲れた。靴を、ちゃんとしたのにしないとダメだなあ。自転車に乗るからと、やっすい靴を使っているが、かかとへのダメージが大きすぎる。
 以下、今日の写真。

二の丸入り口からスロープまで

 二の丸公園から、西大手門を経由して、頬当御門からの工事用スロープを経由して中へ。今週は工事車両の出入りが制限されて、大変だろうなあ。
 元太鼓櫓や西大手櫓門の建物は撤去されて、石垣は蛇籠とコンクリで固められている。重文の櫓は修理復元されるのだろうけど、復元された建物は、どうなるんだろうなあ。







宇土

 建設時から残る建物としては最大の建物である宇土櫓。今までは、加藤神社からしか見られなかったが、反対側も見られるように。続櫓との接続部の跡が痛々しい。あと、なんか、全体に傾いているように見えるのだが。大丈夫なのだろうか。
 あちこちシートで覆って、現状維持といった状態だけど、どうするのだろう。また解体修理ということになるのだろうか。石垣の傷みも激しいようだし。
 個人的には、天守閣よりこっちが大事だと思うのだけど。まあ、文化庁との協議とか、いろいろとあるんだろうなあ。










天守閣西側

 大天守はあらかた修理済みで、今は、小天守の修理改修が進んでいるところ。コンクリむき出しの小天守も、なかなか異次元な感じでかっこよかったけど。だんだんと、天守らしさを取り戻しつつあるな。
 カラフルなミック社のクレーンがチャームポイント。














 なんか、この写真を見ると、石垣の角と面の部分に隙間がけっこう空いているように見えるが、天守の重さを負担していないから、即崩れる心配が無いなら、手を付けないってことなのかなあ。



 瓦などの資材もストックされている。


天守南側

 大天守入り口近辺は、まだ、足場で覆われている。






天守東側

 本丸の広場から見た天守の姿。資材が置かれた向こうに、大小天守が。
 クレーンがつり上げ作業中で、思わずそちらに目が行く。














本丸御殿

 壁が落ちているが、他はあまりダメージを受けているように見えないが。実際のところ、どうなんだろう。




暗がり御門と土産物店、その他

 本丸御殿の下に続く暗がり御門は、現在も閉鎖中。ほかの枡形と比べると、石垣の崩れは少ないように見えるが。




 店主南側の土産物店の建物は、石垣が崩れてのしかかっている。瓦もずれているし、内部のダメージ大きそう。




 こちらは、飯田丸方面に降りていくルート。意外と崩れていないけど、曲がった向こうがひどいことになっているんだろうなあ。



 頬当御門の枡形。崩れた石は撤去されて、コンクリートで保護されている。




 備前堀に、作業用の道路が付けられている。一般公開用の通路を建設中なのかな。


南大手門櫓

 こちらも、復元建築物。派手に歪んでいるのを、鉄骨で補強している。土壁もヒビだらけだし。







 奉行丸は、石の仮置き場になっている。



 なんでか、唐破風だけ、置かれているけど…



奉行丸下の小道

 元太鼓櫓から未申櫓の下を通る小道は、崩落した石垣で覆われたまま。ここ、御幸坂から二の丸方面に自転車で抜けるときによく使う道だったんだけど、そのときに地震が起きたら逃げ場無いなあ。想像するだに恐ろしい。堀に滑り落ちるか、石垣に潰されるか。どっちも、死にそう感が…



お出かけ

 雲一つ無い快晴なので、お出かけ。
 熊本城特別公開を主目的に、二の丸の県立美術館、伝統工芸館を見て、最後は街で買い物。美術館に行くと、特別展のチラシを大量にもらってきて、荷物が重くなるから困る。おかげで背筋から首筋にダメージが。



 美術展の感想は明日に。


  熊本は快晴だけど、なんか、関東方面は台風19号が相当ヤバそうだ。
 超巨大強力台風に、大潮とは、また、星の巡りが悪かったなあ。国土交通省あたりは、今頃、水門閉める準備を大わらわだろうなあ。それでも、下手すると、東京湾岸があちこち沈みかねない。
 千葉方面では、ブルーシートが飛びまくるだろうし、どれだけ被害が拡大するやら。かといって、ブルーシートを撤去してしまうと、雨漏りがひどくなるだろうし。どうしようもない感が強いなあ。そもそも、せっかく回復した送電網がどうなるか。

佐野貴司『海に沈んだ大陸の謎:最新科学が解き明かす激動の地球史』

 意外と読み終わるのに時間がかかってしまった。地球の鉱物の化学組成をメインにした本。以前、太平洋の巨大海台の本を読んでいたので、新しい本も手に取ってみることに。
 話の枕に、ムー大陸の話を使っているけど、アレが人種差別思想の本であると指摘されていることを考えると、編集者も含めて、少々無防備だったんじゃなかろうか。そもそも、1万2000年前なんて、つい最近にそんな天変地異が起こったら、痕跡がぞろぞろ残るだろう。南極の氷床のボーリング・コアとか。間尺に合ってないんだよなあ。


 同じマントル物質のかんらん岩で、リソスフェアとアセノスフェアに別れるというのがいまいち理解できていなかったが、海洋地殻形成の際に、一部が溶解分離しつつ、かんらん岩の範疇にとどまり、流動性が低下したのがリソスフェア。そして、かんらん岩の10%強くらいが玄武岩とはんれい岩になったのが地殻。アセノスフェアの対流から分離して、アセノスフェア上を、マントルに沈み込む引っ張りと、浅い海嶺から深い海溝へと滑り落ちて行く力で動く、と。
 太平洋プレートは2億年ほどまえに出現した、比較的新しいプレートで、既存のプレートを押し出しながら、世界最大のプレートに成長した。
 また、太平洋には、巨大海台が複数存在し、これらはかつて一体で大陸を形成していたが、プレートに引き裂かれてしまったという説が提案されていたが、これは、これらの海台の構成物質が玄武岩であることや、プレートの動きの研究から、ほぼ否定されている。


 大陸を形成する大陸地殻の構造は、海洋プレートと比べると複雑。火成岩、深成岩、堆積岩など。最下部には、はんれい岩がマントルで変成したグラニュライト、深成岩の花崗岩、各種の火成岩が浸食分解され、堆積した堆積岩など。全体として、海洋プレートやマントルのかんらん岩より比重が軽い大陸地殻は、海洋プレートより比高が高くなる。
 大陸地殻の平均組成の求め方が興味深い。安定地塊の各所から採取した岩石の分析。あるいは、頁岩の代表的な産地を調査して平均組成を求め、下部地殻の平均組成と合算して、SiO2含有量が約60%の安山岩組成と算出すると。
 大陸地殻を構成する安山岩花崗岩が、割と複雑な生成過程を取っている。安山岩は「分別結晶作用」によって、玄武岩マグマの一部が残る、あるいは含水マントルの部分融解などで形成される。花崗岩に関しては、堆積岩が溶かされてマグマ化する、あるいは、流紋岩質マグマがゆっくり冷えるの2パターンが想定される。ここいらあたり、改めてまとめようとすると、まとめきれないなあ。つまり、理解しきれていないわけだ。


 第4章は大陸形成の歴史。ここらあたり、もう、完璧に分からん。いや、読んでるときにはなんとなく分かるんだけど、いま、まとめようと思うと、全然ダメでねえ。
 最初は、年代測定の方法として、ウラン-鉛年代、ジルコン年代、ルテニウムハフニウムを利用するアイソクロン年代などの方法が適用される。
 あるいは、大陸地殻の形成の歴史。マントルが熱かった時代には、トーナル岩が作られていたが、だんだん安山岩になっていく。
 あとは、大陸の成長の歴史。さまざまな成長モデルが提案されているが、特定の時代に急速に発達したというのが、現在のところもっともらしい、と。これは、ハフニウムと酸素同位体比を利用した年代の決定からは、33億年前と19億年前に急速に発達したらしいという見通しが得られているそうな。


 ニュージーランドを含む大陸地殻は、かつて、大陸であった可能性が高い。しかし、沈み込み帯の近くにあって、沈み込み帯の後退によって引き延ばされ、沈んでしまった。そういえば、ニュージーランドも、比較的最近まで、沈んでいた島だという話を聞いたことあるような。大陸の辺縁では、そういうドラスティックな変動が起きうると。
 あるいは、大西洋に存在するリオグランデ海台が、大西洋の「大陸」であった可能性。
 そして、最後は巨大噴火と巨大隕石といった天変地異。個人的には、巨大隕石では、大絶滅を説明しきれていないように思えるのだが。


 以下、メモ:

 融ける前のマントルアセノスフェア)も融け残りマントル(プレート)も岩石名は同じ「かんらん岩」ですが、12~15%融けた分だけ化学成分が変化します。マグマとマントルの化学組成が違うため、マグマ成分が取り去られた融け残りマントルともとのマントルでは、成分が違ってくるのです。具体的には、融け残りマントルは融ける前にくらべてアルミニウムやカルシウム成分が減って、マグネシウム成分が多くなります。p.56

 なるほど…

 なお、巨大海台が海洋プレートに強くへばりついていると、海洋プレートの沈み込みがとまってしまうこともあるようです。このようなことが起きると、ほかの多くのプレートの動きが変わってしまいます。実際、長い地球の歴史において、世界中のプレートの動きがガラリと変わってしまった時期が何回もありました。巨大海台の大陸への付加は、プレートの動きが変化する原因の一つと考えられています。p.62

 そのとき、どんなことが起きるんだろう。地震とかのパターンが大きく変わりそうだけど。