アーネスト・ヴォルクマン著『戦争の科学』感想

アーネスト・ヴォルクマン著『戦争の科学:古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史』主婦の友社 2003 ISBN:4072350168

古代から相手の兵器を上回るために科学が投入されてきた。そのスパイラルの果てに「究極兵器」核兵器が開発され、さらに強力な兵器の探求が続いている。人類の破滅を防ぐためには「純粋科学」は価値中立的なものだなどと逃げずに、科学そのもののコントロールが必要だ。
本書の主張をものすごく乱暴に要約すればこのようになると思う。その意味で、訳書の副題「古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史」は誤読ではなかろうか。
また、人類史をつうじて科学が戦争に動員されてきたことを示すため、紀元前2000年前後から語り起こしているが、そこに不正確な記述が多いのは大きなマイナスである。分かる範囲でも、サグレシュの「航海学校」は存在そのものが怪しいとされているし、207ページの舟橋への攻撃にしても最終的にアントワープか陥落したことは書かれていない(きっちりノートをとって調べればまだ出てくるだろう)。前近代の記述が不正確であるために、全体の信頼性が低下してしまったように感じる。18世紀あたりから語り起こせば、もっとコンパクトですっきりしたものになったのではなかろうか。