中東和平:「分離壁」やむを得ない選択(朝日新聞03/11/21付け記事)について一言

昨年の11月21日に朝日新聞の「私の視点」欄に掲載された駐日イスラエル大使の文章について一言言いたい。新聞の切抜きを整理していて出てきたものだが、あまりにあからさまな自己正当化がなされていて、あきれ返った。日本人はこのくらい書いておけばころりと騙されるとでも思っているのか。

「洗脳」という言葉を使ったのは、これら若い人たちは、意図的に真実から遠ざけられているからだ。我々は
彼らの何人かと話して、56年前に国連がパレスチナ人に提示した国家案を彼らが全く知らないことが分かった。
1948年にこの国連決議をアラブ側が拒否し、誕生したてのイスラエルを攻撃したことを知らない。67年の六日間
戦争をアラブ側が仕掛け、ヨルダンが西岸を、エジプトがガザを失ったことを知らない。

という一文があるが、歴史を故意に捻じ曲げているように思える。1947年の国連決議(パレスチナ分割案)は人口比で大きな差があったにも関わらずユダヤ側が土地の60%を得るというものであり、現在の視点から見てもとてもアラブ側には受け入れらなかっただろうと思われる。67年の六日戦争にしても、アラブ側の挑発があったとはいえ、実際の戦争はイスラエル側の奇襲攻撃で始まったことを忘れてはなるまい。
また、ここではアラブ側が共存を拒否して戦争を仕掛けてきたように主張されているが、スエズ運河の利権を目当てに英仏と共謀して仕掛けた第二次中東戦争が無視されているのはおかしくないか。
続いて、

 彼らは、パレスチナ国家への道を開くのが、イスラエル市民を爆弾で吹き飛ばすことではなく、イスラエル
の共存だということを理解できないのだ。

という文章も、ラビン首相暗殺をはじめ、モスクでの無差別乱射事件やシャロンの挑発など、イスラエル側から共存を拒否してきた経緯を都合よく忘れ去っているように思える。

 この治安目的のフェンスが、その反対側の人々の生活を「不便」にするという議論がなされた。ある程度は正
しいだろう。遠回りを余儀なくされる農民もいるだろうし、イスラエルを通過する人々は検問で身分を証明する
必要が出てくる。だが、テロと闘い、同時にいかなる不便もないということは両立しない。

ここもすごい。パレスチナ人の生計の糧を奪い、事実上自治区を封鎖状態に置くことを、「不便」の一言で片付けるとは信じがたい。パレスチナ人の生活を考慮せず、押しつぶしていくことは正当化しようがないだろう。


この記事は、イスラエル分離壁建設を正当化するために書かれたものだが、あまりに出来が悪すぎる。正直最初読んだとき、遠まわしの政府批判かと思ったほどである。もう少しましなものを出してきてもらいたいものだ。
(追記予定)
(追記1:一晩たって読み返すと、少し感情的になっているような)
(追記2:イスラエルは事あるごとに反テロを唱えるが、建国時に激しいテロ行為を繰り返したことを忘れてはならないだろう。
1948年8月のダビデ王ホテル爆破事件や1948年4月に行われたエルサレム近郊での無差別虐殺(デイル・ヤシン村事件)などが有名らしい。
また、首相経験者にはテロ組織構成員が2人もい、第一次中東戦争時のアラブ住民の追い出し計画(ダレット計画)が遂行されたことなど歴史的経緯を振り返るとイスラエルに反テロを唱える資格などないように思える。)