服部英雄『地名の楽しみ:歩き・み・ふれる歴史学』角川文庫 2003 ISBN:404372201X

面白かった。小字地名や聞き取りによる通称地名から中世の地域の状況が映し出されるさまはあぶり出しのようで興味深い。
著者のフィールドに熊本県も含まれることもあり、地元の人間としては驚くばかりだった。「旦過の瀬」という地名は聞いたことがあったが、そういう由来があったとは。
研究方法の案内や小字地名に関する参考文献も付されており、文中の文書もあまりなく、初心者・一般人にも親切なつくり。
ただ、これを手がかりに自分でやってみようとすると、同発音の地名に関する知識や聞き取り調査の方法・作法が大きな壁になりそうな気がする。特に聞き取り調査は、研究の重要な要素であり、具体的な体験談が欲しかった。
あと、新興住宅地の過去の状況・景観に興味を持つものとしては、興味深いと同時に、適用が難しい方法だと思う。