- 作者: 平松茂雄
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/01
- メディア: 新書
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第1章、第3章、エピローグが面白かった。おおよそ80年代以降の中国の軍事・外交政策が一貫していること、今後日本の権益との軋轢が強まることが確実なのは、よく分かった。
エピローグを読むとなんというか暗然とせざるを得ない。マジでこんなこと考えているのですか?
一八四〇年の阿片戦争を契機として、欧米、ついで日本の帝国主義列強が中国大陸を侵略し、多くの中国の領土が奪われた、言い換えれば清朝最盛期に支配が及んでいた地域が中国の領土であるというのが、中国共産党および毛沢東の中国革命の根底にある歴史観であり、そこにはそれらの地域を取り戻すという一種の「失地回復主義」ともいうべき考え方がある。(p.186)
…「三百平方キロメートルの海洋管轄区域」とは、中国大陸周辺の海域、すなわち黄海、東シナ海、南シナ海を指す。そのような主張の根底には、中国大陸周辺海域は「中国の海」であるという伝統的な「中華世界」の考え方がある…(中略)。そしてこれらの「中国の海」は、阿片戦争を契機として当時中国(清朝)が海軍力を重視しなかったところから、欧米・日本の帝国主義列強によって奪われたとして、海軍力によってこれらの「中国の海」を「取り戻す」ことが現在中国海軍に課せられた任務であるとする。(P.188)
………
なんというか、時代錯誤すぎて冗談としか思えない… なんというか「近代世界」の国際秩序とはあまりにかけ離れた思想のように感じる。
あと、「講話」や「理論」が中国の政界で果たす役割も興味深いものがある。この手の「理論」が具体的にどのように作用するのか分析したものはないのだろうか。