2週間前の読書ノート

  • 水谷驍『ジプシー』

ジプシー 歴史・社会・文化 (平凡社新書)

ジプシー 歴史・社会・文化 (平凡社新書)



ジプシーを「各国の歴史のなかで形成されて、その過程でいくつかの特徴を共有するにいたった多様な人間集団」と見る視点から、ジプシー像を整理している。
いままでの単純な「流浪の民」というステレオタイプを脱した興味深い本。
全体としては、食い足りない感じが強いが、新書である以上仕方がないか。
本書では、

封建制の崩壊から資本主義体制への移行の過程でヨーロッパ各地に広く発生した雑多な出自の貧民・流民層にあり、こうした人たちが定住民の主流社会と特殊な関係を取り結ぶなかで、ジプシーという社会的な存在形態を形成してきた。

という議論を紹介している。この視点は非常に興味深い。
ここから、他の周縁民との比較が可能になるのではないか。ただ、一方で、あまりに経済決定論というか、マルクス主義的な歴史観を感じてしまうのだが。


また、第4章のジプシーの現在もおもしろい。
新たな出自の移動民集団がオランダやイギリスで発生していることが伝えられる。

兵士と軍夫の日清戦争

兵士と軍夫の日清戦争



戦場からの手紙を素材に、東北地方の人々が日清戦争をどう「体験」したかを追っている。
台湾での悲惨な植民地戦争の有様については、今まで知らなかったので、非常に興味深かった。