那谷敏郎『十三世紀の西方見聞録』

十三世紀の西方見聞録 (新潮選書)

十三世紀の西方見聞録 (新潮選書)

前3分の2ほどを読んだ。残りの部分はパス。
フビライ・カン時代、中国出生のウイグル人ネストリウス派聖職者2人の西アジア・ヨーロッパ旅行を、まとめなおしたもの。彼らはイル・カン国に定住し、ネストリウス派の中枢を占めるようになり、政権との密接な関係を持つようになる。その関係で、一人はヨーロッパに使者として派遣される。未読部分は、ネストリウス派の衰退の部分だが、つらいので読まなかった。この部分は、「寛容なイスラム」という神話に対する反証だな。
ネストリウス派の歴史が詳しく語られる。興味深い。ちなみにWikipediaによると、現在もネストリウス派は余喘を保っているそうな。アッシリア教会やマラバル教会など。本書の時代までの繁栄に比べると栄枯盛衰の感が強いが。
ヨーロッパ人がアジアの情勢をどのくらい知っていたのかという観点から考えると、本書は逆方向からの人の流れを浮き彫りにする。本書が一例をなすように、アジア方面からの人・情報の流れはけっこう太かったのではないか。十字軍がらみも考えると、この時代のヨーロッパ人はそれなりにアジアの情報を得ることができたのだろう。それが、15世紀以降どうなったのか、そして大航海時代への影響はとなると、よくわからない。そこのところが知りたいのだが。
この本に触発されて、杉山正明の『モンゴル帝国の興亡』を再読。毎度の事ながら面白い。フビライの帝国の、近代的な解釈が気になるもの。