ブッシュが仕掛けた古典的戦争

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今の時点から読み直すとなかなか興味深い。割と見通しは的中している感じだ。

山内: 私が気がかりなのは、ラムズフェルド国防長官の戦略の背後に、楽観主義や主観的イデオロギーの臭いが感じとれることです。
 湾岸戦争で、パウエル統合参謀本部議長は圧倒的な兵力と火力を集中し、きわめて短時間で勝利を手にしました。これはまさに職業軍人の現実的な認識に基づく作戦でした。それに対して、ラムズフェルドは制服組の慎重かつプロフェッショナルな伝統的方法をあえて退け、もっと小規模で機動性の高い、洗練されたと自負する方法を追求してきた。その端的なあらわれが兵力の動員数です。パウエルがクウェートに四十五万人を投入したのに対し、ラムズフェルドは広いイラクでの地上戦に二十万人しか動員していない。
 岡崎: それどころか、ラムズフェルドは最初、五、六万人でやる気だったんですね。それが、去年の秋になって陸軍から「それでは危険すぎる」と公然と批判の声が出てきて、しぶしぶ二十万人を集めたのです。いまとなってみると、陸軍の意見が正しかった。

岡崎: 誤算というか、高をくくっていた最大の理由は、イラクの人心をあてにしたことにあります。アメリカ、イギリスの諜報機関は、戦争が開始されたらすぐにイラク国民がフセインから離反する、と思っていた。
 何故、そんな結論が出たかといえば、簡単なことです。イラク外の亡命イラク人は、一説では四百万人、はっきりしているだけで数十万人になる。彼らはそれぞれイラク国内に親戚知人がいて、それが米英の諜報機関にとって最大の情報源になっています。彼ら、反フセインの亡命イラク人から情報を集めたところ、ほとんどが「イラクにいる自分の仲間は、戦争が始まったらみんな離反する」と証言した。しかし将来は別として、いまのところそうなっていない。

実は、私はこの点こそ一番のポイントではないかと思うのです。イラクの民心がフセインからの解放を喜ぶか、アメリカを解放者として受け入れるのか。これは戦局を左右するばかりか、イラクの戦後経営にも影響し、ひいては戦後のアラブ世界全体にも関係してきます。

イラク国民の民心はフセインから離れていた(都市部での防御施設の構築ができなかったことなどから考えると)が、アメリカを歓迎もしなかった。占領統治のはじめの時点で、充分な戦力があり、官庁などの警備がうまく言っていれば、あるいは反米勢力を押さえ込むことができたかもしれない。
そう考えると、ラムズフェルドの戦争指揮はやはり問題だったのだろう。
あるいは、米軍が充分な兵力を持ち、全土で治安維持をできれば、あそこまで反米勢力の跳梁を許さず、現在のもぐら叩きのような状態にはならなかったか。


私は岡崎氏をあまり好きではないので、評価が辛くなる部分もあるが、少々外した意見が多いと思う。

岡崎: 緒戦でいちばん大きかったのは、アメリカが南部の油田地帯を押さえたことです。戦争中、イラクから石油が輸出されないことはすでに織り込み済み。しかし、イラクが油田に本格的に火をつけてしまったら、旧に復するまでに半年はかかるところでした。これで、石油が暴騰する危険性がなくなり、戦争の経済的影響は予測可能になった。

結局、アメリカはイラクの石油の輸出再開に手間取り、経済的影響を拡大させてしまった。

岡崎: ここで万が一、戦争の長期化にアメリカの民心が倦んで、アメリカが戦争をやめたら、今後、二十年は立ち直れないでしょう。ベトナム戦争からアメリカが立ち直るまで、やはり二十年かかりました。そうなったら、世界は混迷に陥る。中東には誰も手をつけず、ヨーロッパやアメリカでは反米左翼のようなものが跳梁するでしょう。それを知っているから、アメリカも引けませんよ。

現状はそのままそんな状態に。しかし、「反米左翼」って、変な言葉を使うな…