ジャパニーズ・エア・パワー―米国戦略爆撃調査団報告/日本空軍の興亡
- 作者: 大谷内一夫
- 出版社/メーカー: 光人社
- 発売日: 1996/08
- メディア: 単行本
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ソロモン諸島での攻防までは、日本の陸海軍航空部隊は、高い質を持ったパイロットによって高い戦力を維持していたが、ソロモン戦以降は、パイロットの補充が利かず、戦力が低下していったことが指摘されている。また、地上支援組織の欠陥から航空機が多数失われたことが指摘される。
第二部では航空機の生産・消耗、燃料、搭乗員について扱っている。生産に関しては意外に健闘していたという印象もあるが、航空燃料や搭乗員の補充を見ると、日本が戦争に乗り出す能力が、基本的になかったこと。日本の戦争遂行に、石油の入手が常にネックになっていたことが明らかになる。また、航空機の整備・維持システムの不備、メカニックの消耗については、もっと知りたい。
本書では、カミカゼについて、一章を割いているが、ここに米軍が受けた衝撃が反映されているのだろう。
河辺虎四郎中将(開戦時から、陸軍航空本部総務部長、満州派遣航空軍司令官、陸軍航空本部次長を歴任。終戦時は参謀本部次長)
「これらの攻撃に参加しただれもが、彼自身の死によって最終的勝利を得ること確信し、幸福だった。他の手段との比較では同等(イコール)に見えなくとも、精神的手段では同等に戦える、と日本人は最後まで信じていた」
猪口力平海軍大佐(フィリピン作戦時は中佐で、海軍第一航空艦隊主席参謀)
「カミカゼの中心(センター)は士気(モラール)である……連合軍がフィリピンに上陸する直前、われわれは天皇と国家に命を捧げなくてはならぬ、と感じた。これは生まれついたときからの感情だった。(アメリカ人には)よく理解できないことかも知れないし、絶望的(デスペリート)とか、馬鹿馬鹿しい(フーリッシュ)とか呼ぶかもしれない。しかし、われわれ日本人は、生涯の基盤を天応と国家への服従(オピーディアンス)においている。他方、武士道(封建時代の日本の戦士のおきて)にしたがって、われわれは最高の場所を死のなかに追求する。
カミカゼは、これらの感情から発生したのである。……アメリカ式思考法の難点は、帰還することを念頭にいれて出撃することだ。これでは、100パーセント効果的に使命をはたせまい」
そういう自分は生き残っているんだよな。煽るだけ煽っておいて、自分はたたみの上で死んでいるんだからな…
こう言っては何だが、この人たちには、現場での感情的な機微は分からないだろうなと思う。