ロン・ノルディーン『現代の航空戦』

スミソニアン 現代の航空戦

スミソニアン 現代の航空戦

 1960年代以降の戦争で航空戦力がどのように運用されたかを、紛争ごとに解説している。ベトナム戦争から、印パ、中東戦争、イラン・イラク戦争フォークランド紛争、そして湾岸戦争、ユーゴ内戦と航空機がまとまって運用された戦争を全て網羅している。
 基本的には、ソ連式の防空システムと、それを制圧しようと試みるアメリカとイスラエルの防空制圧作戦が主な流れになるのか。近年に至るまで、ソ連式の防空システムは強力な防空力を誇り、それを制圧するのに西側諸国が相当な努力を強いられたこと。場合によっては、相当な威力を発揮したことが分かる。
 また、圧巻は湾岸戦争。2500機の作戦機で、一日2000から3000ソーティ、合計で約11万ソーティ。使用した弾薬が9万トン。どれだけの支援能力が必要だったのか、想像できない。こんな戦争はどこの国でもはできないし、そうどこでもはできないだろう。これだけの攻撃に耐えられる防空システムは構築できないだろう。また、その後の制圧能力の進歩も興味深い。
 ユーゴ紛争や初期のベトナム戦争の政治的拙劣さも、印象深い。
 あと、気になったのは、機種名の使い方。普通トーネード、ジャギア、ラファールと呼ばれているが、わざわざトルネード、ジャガー、ラファエルとしたのはなぜだろう。確かに英語読みではそうなるし、トーネードはイギリスでも使われているからそれでもかまわないかもしれないが…