ジュディス・レヴァイン『青少年に有害!』

青少年に有害! 子どもの「性」に怯える社会

青少年に有害! 子どもの「性」に怯える社会

これは、性やポルノの問題に関心を持つ者には必読だな。もう、出だしから付箋だらけになりそうだ。今検討されている児ポ法は、ある面では、10代(特に後半)の性的自己決定権を侵しているものだよなあ。ティーンエイジャーの性的行動については社会的教化の方が有効だと思うのだが。
しかし、本書の表紙は、児ポ法で単純所持が規制されるようになったら、やばそうだ。
一旦、返却に必要があるので、よんだ部分だけメモ。

 この二十年間、社会と経済の不安定感が増大するにつれ、子どもの性に関するパニックも増大している。アメリカで不安が広がるときには、もっぱら性をめぐったものであることが多い。セックスは、個人的な達成感に欠かせないものでもあるが、個人と社会に大きな破壊をもたらす可能性があるとも考えられている。大衆の性への恐怖は、最も傷つきやすい者のまわりに集まる。つまり、女性と子どもだ。
 二十世紀後半、このような恐怖に対する政治的活動は、二方向から起こった。ひとつはフェミニストの側からの動きで、フェミニストは女性と子どもに対するレイプと家庭内暴力が蔓延していることを告発し、加害者が罰され、犠牲者が非難されることのない新しい法的な枠組みを提唱した。もうひとつは宗教右派による動きである。女性と子どもは「生まれつき」、性的なものならなんでも嫌うものだから、特別な保護が必要だという信念が政策に持ちこまれた。
 これから見ていくように、このふたつの流れが結んだ同盟は、不安定ではあるが過去に例がないわけではない。性的保守派のフェミニストは、あからさまな性的表現は女性に対する暴力だと定義した。宗教右派は、1986年に作られたポルノグラフィーを論じるミーズ委員会にフェミニストとともに参加し、大人向けのポルノ、ひいては急増していると言われる「子どもポルノ」に対する無差別な取締りを合法化せよと主張した。
p.14-15

なんというか、現在の日本の状況も似たようなものだな。あと、右翼とフェミニストの結託の歴史。

それはティーンエイジャーのセックスが増えているという話である。初交年齢は低くなり、あっという間に世間ずれし、もたらされる結果も以前より恐ろしいものになっている。ある意味でこれは真実だ。身体は早く成熟するが結婚は遅くなっているということは、身体的に性に関する準備ができている年齢と公式に性行為を認められる年齢とのあいだに、十五年から二十年のずれがあるということだ。アメリカ人の異性愛者の90パーセントが婚前交渉(そもそも結婚すればのことだが)を経験していて、ほとんどが十代で経験していると聞いてもだれも驚かない。毎年、このような青年の四人にひとりが、ヘルペス、淋病、クラミジアのような病気にかかっている。
 一方、中学生の子どもが性交渉をおこなっているという恐れはほとんど現実を反映していない。十五歳までに性交渉を持つのは、女の子で十人中たったふたり、男の子は十人中三人。
p.16-7

身体的成熟と社会的成熟の乖離。

「この調査から、大人の世界が作りあげたのは、子どもの成長と経験を認めようとしない大人のための心理的検閲であることがわかります。検閲を通して選択的に認識すれば子どもの性意識について知ることを避けられますが、かといってその事実が消えるわけではないんですよ。
p.41

フィルタリングもポルノ規制も基本的には規制側の自己満足と。


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質の低い煽りだな。特に無防備な層がこの産科医に集まっているだけでは。

日本性教育協会の調査によると、中学生男女の性交経験率は、2005年度は4%ほど。赤枝六本木診療所院長の赤枝恒雄さんは、「最近では、中学生が12%という調査があるそうですよ。すると、小学生は、数%はあるでしょうね」と言う。

ここを見ると、まあ個人差の範囲に収まるのではないかと思うが。
で、こう続く。

横浜市教委の担当課長は、事件報道に対し、困惑した様子でこう明かす。

「中学生が買春なんてどうなっているんだろう、とびっくりしています。性の乱れは認識していませんが、把握していないだけかもしれません。フィルタリングなどの啓発活動を浸透させなくては」

マスゴミマッチポンプ。今更フィルタリングなど無駄。実際に、かなり深いところまで踏み込んだ性教育が必要なだけだろう。