本田毅彦『大英帝国の大事典作り』

大英帝国の大事典作り (講談社選書メチエ)

大英帝国の大事典作り (講談社選書メチエ)

イギリスを代表する事典である、ブリタニカ、OED、DNBを取り上げ、その編纂の背景を追ったもの。イギリスの19世紀末の知識人の状況が描かれる。
難を言えば、ブリタニカと他二者の時代がずれていて、それが散漫な印象を与えるところ。
それぞれの事典に関連してスコットランド系の知識人が活躍し、イングランド文化とスコットランド文化が融合して新たなブリテン文化が出現する過程と把握できるという指摘。中産階級出自で、少々オックスブリッジの主流からはずれた、むしろジャーナリズムに近い人々が核になって編纂された印象。あとは、女性の問題。女性が知的専門職から排除されていた状況。そのあたりが印象的。イギリスでは民間ベースだったという点も興味深い。
また、OEDやDNBが辞書を通じて描き出す「大英帝国」のイメージの問題。