江戸八百八町に骨が舞う―人骨から解く病気と社会 (歴史文化ライブラリー)
- 作者: 谷畑美帆
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
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記述が総花的で食い足りないところがあるのと、全体の文脈が不明確なところが、欠点。しかし、人骨とその埋葬状況から、どのような情報が読み取れるかと言う点で、興味深い書物。
墓と副葬品から、どのような社会階層の人間が埋葬されたのか、社会階層ごとの健康状態が読みとれる。また、人骨を分析することによって、栄養状態や(骨に影響が残る病気限定だが)どのような病気が流行っていたかが読みとれる。江戸の地下が人骨というか、墓場だらけだとか、水辺に浮かんだ死体は放置しておいていいとか。栄養状態、江戸とロンドンの衛生状態の差、梅毒の蔓延とその地域差なども興味深い。
印象に残ったのは、ニューヨークのアフリカン・バリアル・グラウンド(意訳すれば黒人奴隷墓地)から出土した人骨の話。比較的若い人の人骨でも、重労働の結果骨が変形しているそうだ。未成年でも重労働が課され、その結果関節症などが遺骨から読みとれるとか。18世紀初頭の黒人奴隷の扱い、そして、それが発掘された遺体からストレートに読みとれること。
古人骨からなにが読みとれるか、最初に読む本としては、適していると思う。