盛本昌広『贈答と宴会の中世』

贈答と宴会の中世 (歴史文化ライブラリー 254)

贈答と宴会の中世 (歴史文化ライブラリー 254)

 中世(特に室町時代中期あたり)の宴会と贈答について、広い範囲から情報を収集した本。接待と宴会、贈答と年中行事や儀礼、海産物や菓子類の贈答など。だいたい7、8割が贈答関係。室町時代においても、儀礼と贈答こそが政治の中心だったのだろうな。そのくらいの密度。
 個人的には、贈答の網の目を通じて、社会の各層がどのように組織されていたのか。そのミクロの様態と政治史の関連。そのようなところに興味がある。その点では、問題関心とずれる。
 ところで、延喜式にあるように古くから各地の海産物か京に進上されていたのだが、常々思うことは、それっておいしかったの?ということ。塩漬けや干物の類ならともかく、生魚を京都まで運ぶとすれば、どこにしろ結構時間がかかったのではないだろうか。そうやって運び込まれた物は、どういう状態だったのか。他の生鮮食品も含めて、どのような状態で、どのような味だったのか。冷蔵輸送で生鮮食品が流通する時代に生まれ育った身では、どうにも想像できないものがある。