
- 作者: 佐谷眞木人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: 新書
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例えば、第七章「死者のゆくえ、日本の位置」で日清戦争の記念碑についての話があるが、ここでは東京や名古屋の事例が取り上げられている。愛知県下には114基が現存するとか。しかし、ここ熊本では、日清戦争の記念碑というのは、石碑に興味を持って見ているが、今まで遭遇したことがない。少なくとも、西南戦争の記念碑と比べると著しく存在感が薄い。熊本の第六師団が、威海衛の攻略に動員された結果、それほど損害を出していないという事情があるのだろう。そのあたりの地域による濃淡も重要なのではないか。
侵略と善隣という本来は相反する行為が渾然一体となりながら、近代の日本は対外政策を推し進めていくことになる。それは、朝鮮の独立を進め、近代化を助けるという「善意」のもと、その近代化の「指導のために」、「併合」という表現を用いて植民地化を進めることにつながっていく。その始発点が日清戦争だった。p.38
この行は、しばらく前に読んだ『害虫の誕生』と被る感じ。農業害虫を発見し、それを駆除することが公であると主張する当局とそれを世界観の破壊と反発する農民たち。農民たちを遅れた者と見る視点。それが、日清戦争時の日本側の視線とそれに反発する清や朝鮮とダブるように感じる。