池田香代子他編著『日本の現代伝説:ピアスの白い糸』

ピアスの白い糸―日本の現代伝説

ピアスの白い糸―日本の現代伝説

 いわゆるところの「都市伝説」や噂話を、「現代伝説」として定義し、集成した本。民俗学畑や文学畑の人が集まって編集した、学術を意識した本。編著者を代表して池田香代子氏が解説を書いているが、噂、メディアなどを通じて流通する怪談的な噂話を分析する試みだそうだ。確かに、編著者の収集した話に加えて、各種の記録された類話や海外の事例を並べて、背景などを考察しているので、背後の想像力などを含めて、ある程度成功しているのではないだろうか。ただ、解説を書いた池田氏が担当した外国・外国人の章は、少々力が入りすぎてから回っている感じも。確かに、外国人をめぐる噂話(集団レイプの噂など)は、人種差別的、あるいは外来者の排除のような心性が裏にあるのは確かだろう。ちなみに、私が熊本で聞いたこの手の噂話の類話では、「福岡から来た暴走族」が犯人だったけど。
 各種の参考文献をきっちり付しているのも、高評価。


 本書の出版は1994年。インターネットの直前といっていい時期だが、現在のインターネット上、特に2ちゃんねるを通じた、怪談の流通をどう論じるだろうか。この手の話は死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?「子供の頃の変な記憶」まとめサイトなどのまとめサイトを通じて流通しているとか、語り口が一人称になっていることが多い、匿名のコミュニケーションなど、噂話とはずいぶんスタイルが変っている。改めて分析してみると面白いのではないかと思う。