『シュガーコートフリークス』クリア

シュガーコートフリークス

シュガーコートフリークス

 良くも悪くも、「おとぎ話」だと思った。なにもかも振り捨てて、勇者とお姫様が結ばれる。その点からすると、非常に正しくできあがっている。しかしまあ、別の視点で考えると、この行動はどうだろうという気も。
 珠姫ルートに入って、いきなりSFになったのに驚いた。宇宙移民が新天地にというと、アン・マキャフリイの『パーンの竜騎士』シリーズや荻原規子の『西のよき魔女』シリーズを、人類を導く歩るグラムという点では『風の谷のナウシカ』を思い起こさせるかな。特に、管理システムを破壊し、「大いなる歴史(プログラム)」から人類を解き放つというのは、『ナウシカ』と通底するテーマと読むことができるかな。生は束縛されるべきではないという点で。ただ、「アルレヴェリス・システム」は、「竜器」を定期的に取り込ませなければならない状況にあるという点で破綻しかけているとはいえ、また「大いなる歴史」がそれなりの残酷さを持つとはいえ、1人の人間と世界全体の安定を天秤にかけるには少々苦しいような気が。『ナウシカ』では、今生きている人類は浄化のあとでは用済みになってしまう、繰り返す破壊という、現生人類にとっての大きな不利益があるわけだが、本作品ではそこまで行っていないわけで。選択として難しい。私自身は、マリーが発した

「世界がどうとか、戦争がどうとか、難しいことはわたしには分からない」
「いいじゃない!? 苦労したって!!」
「わたしは、珠子ちゃんのいない世界でのんびり暮らすよりも――」
「珠子ちゃんと――みんなが一緒に揃った世界で、苦しみながら、悩みながら生きていきたい!!」
「そうじゃなきゃ楽しくない!! きっと笑っていられない!!」
「そんなのわたし――認めない!!」

という台詞には同調できないものがある。それこそアフリカで見られるような社会の破綻を考えるとね。子供が次々と死んでいくような世界。少なくとも、今現在「ヒトが紡ぐ、新しい歴史」に希望が持てる気がしない。大体において、人間の歴史は破壊の歴史だしな。
 ただ、そこのところを振り捨てて、青臭さに徹したことが、この物語に清涼感をもたらしていると思う。「竜」を倒して、囚われの姫君を救い出すというのは、まさに英雄譚の華だ。


 全体としては、テンポ良く話が作られた良作だと思う。少なくとも、精神的には楽に読めるゲームだった。『ヨスガノソラ』で苦労しただけに、次にプレイした作品が息苦しくなくて楽しかった。コメディタッチで、緩急も付いていて読みやすい。戦闘シーンで喋りすぎじゃねとか思わなくもなかったが、それ以外では、まあ、悪くない。展開が読めても、苦痛がないのはよろしい。全体としては、以前の『カルテット』と似た作風。ベタだけど、それが気持ち良い。
 攻略順は、ジル→マリー→レン→珠子の順番。珠子は最後固定。とりあえず、ジルかわいいよジル。作中で「生真面目で不器用な――そして誰よりも頑張り屋」と評されているが、このタイプ、しかもつつくとすぐ騒ぐタイプは大好き。他ヒロインルートでも輝いている。特にマリールート。あと、こちらもお姫様を奪う話だ。マリーとレンは家族の絆といった話。マリーとの結婚式のシーンは良かった。あと、二人はエロい。脇キャラの活躍も光る。特に、ジノは全般にわたって大事なところで活躍しているなと。あと、レンパパとクロエがお気に入り。
 他に気になったのは、共通ルートから個別ルートへの分岐の仕方。ジル、マリーは自然につながっているが、レン、珠子はいまいちつながりが悪い感じ。主人公の心境の変化がわかりにくいというか。レンはこのまま友達で終わってしまいそうな雰囲気が共通ルートを通して漂っているというか、どちらも恋愛事にうといのがじれったい。珠子の方は、世界か珠子か両天秤にかけなくてはいけないが、どうもハルのそのあたりの意思が分かりにくい。
 あと、『ヨスガノソラ』の主人公も「ハル」で、今回も「ハル」。二作続けて、主人公の呼び名が同じなのが面白かった。最初は違和感バリバリで。