大田眞也『スズメ百態面白帳』

スズメ百態面白帳

スズメ百態面白帳

 2月になると、スズメの鳴き声が変わる。こう、何かを引き付けようとするというか、呼ぶようなというか。どうもこの時期あたりから、繁殖期らしい。で、気になったので、この本を引っ張り出した次第。最近出たように思っていたが、意外に時間が経っていたな。
 題名のごとく、長年のスズメの観察から、スズメの生態や人との関わりなどさまざまな側面を描いている。熊本の人が書いた本で、出版は福岡の出版社。教員をやっていた人のようで、本書では熊本市内と球磨郡の川辺川流域での観察が多い。
 大体、2/3が生態について。食性から、天敵、子育て、巣、群れについてなど。残りは、分布や進化の話とスズメについての民俗が各一章。身近でよく見かける鳥なのに、全然その生態を知らなかったなと思いつつ読んだ。特に天敵の話とか、巣作りの話とか。カラスやツミのような比較的大きな鳥だけでなく、モズにもたまに食べられているとか。
 個人的に気になるのは、スズメの巣がどこにあるか。私の家の庭にも良くやって来るし(特に春)、この近辺に住んでいるのは確かなようだが、どのような巣を作っているのかわからなかった。本書によれば、瓦の隙間など、人工物の隙間に巣を作るらしい。住宅街なので、軒の隙間とかに作っているのだろうか。最近の建築様式の変化で、住宅の隙間がなくなって、巣を作る場所に苦労しているのだとか。自然が多いところでは、木のうろやかわせみ類が崖に掘った穴、ツバメの古い巣など、色々使うらしい。
 身近なようで、全然知らないことばかりなので実に面白かった。スズメの適応力と用心深さに感嘆する。