田中広明『豪族のくらし:古墳時代〜平安時代』

豪族のくらし―古墳時代~平安時代

豪族のくらし―古墳時代~平安時代

 古代の豪族について、遺跡の発掘量差結果から読み取れた情報を中心に、再構成を試みた書物。想定している読者層は、ある程度知識がある人の模様。
 遺物から読みとれる情報は多様で、館の形や変遷、遺物から物質的側面、特に色に表現された権力関係というのが読みとれる。古代の国家・豪族の色や衣服へのこだわりは、まさに古代国家が「儀礼国家」だったと確認される。あと、古代の豪族の不安定さというのも、中世と比較して興味深い。
 ただ、遺物に残された情報というのは、国家の権力システムやイデオロギーが物質に表現された跡であって、表現される前の考えというか、直接の情報でないというのが、隔靴掻痒感を強める。確かに、古代については、文字による記述情報が限られている以上、考古遺物からの分析の方がより豊かな情報を含んでいるのは間違いないのだが。
 本書の著者の『地方の豪族と古代の官人』(ISBN:4760123253)というのを書店で見かけて、一度読んでみたいのだが、如何せん高い。しかも、熊本市内の図書館には入ってないとくる。困ったものだ。