エティエンヌ・ダルモン、ジャン・カリエ『石油の歴史:ロックフェラーから湾岸戦争後の世界まで』

石油の歴史―ロックフェラーから湾岸戦争後の世界まで (文庫クセジュ)

石油の歴史―ロックフェラーから湾岸戦争後の世界まで (文庫クセジュ)

 文庫クセジュ初体験。コンパクトにまとまった石油産業の通史。紙幅の関係から仕方がないが、有力国家のパワーとかその側面、あと精製加工方面が欠けている。あと、フランスの著者が書いただけに、フランスの石油企業や政策が叙述されているのが興味深い。基本的には、石油メジャーの世界はアングロサクソンの世界だしな。
 第一章は、19世紀後半から第一次世界大戦直前。石油の商品化からスタンダード石油の独占、ロシアやインドネシアの石油生産、スタンダード石油の解体。第二章は戦間期。中東方面での探鉱の進展。中南米の開発。第三章は、戦後の繁栄期。中東を中心に開発が進む。第四章は、石油ショック後。石油資源の国有化の動きと石油の安値の時期。
 すっきりと読めるので便利だが、実際に石油の歴史についての知識を身につけるなら、固有名詞を中心に、きっちり頭に入れていく必要があるだろう。合弁会社だの子会社だのが、山ほど出てきて混乱する。特にWW1以降の中東方面では、英米仏が権益を分け合うために、複雑な出資関係ができていて、覚え切れなかった。まあ、パッと、流れを頭に入れるには便利だろう。いきなり、ヤーギンの『石油の世紀』を読むよりは、敷居が低い。