菊地浩之『日本の15大同族企業』

新書516日本の15大同族企業 (平凡社新書)

新書516日本の15大同族企業 (平凡社新書)

 創業者の一族が経営に影響力を保持し続けている、ないしは近過去までそうであった企業を取り上げている。先日読んだ『日本の15大財閥』の続編。この本では、トヨタ、松下をはじめ、機械産業、製薬、鉄道など普段目にする機会の多い企業が取り上げられている。
 本書を読むと、株による支配の裏付けのない場合、三代以上支配を続けるのは難しいのだなと感じる。トヨタなどは、一族の子弟を厳しく鍛え上げている例外のようだ。何代も社長を続けるなら、相応の配慮と社内の幹部の養成が重要なようだ。その点では、阪急の小林一三が好例だろう。失敗例も印象的。三洋の井植家や、特に西武の堤家の自爆っぷり。
 あと、つけてある系図が面白い。初期には、会社の幹部との血縁関係が目立つ。これは、内部の人間を番頭にするのと、外部からのヘッドハンティングの両方がありそう。あとは、財閥家系、国会議員家系、同族企業家系、大企業の幹部の、閉鎖的とも見える血縁関係が興味深い。どういう、社会的な意味をもったのか。企業幹部までを視野に入れて、プロソポグラフィックに追求してみると、日本の統治構造も見えてきそうな感じだ。