明治の機械工業―その生成と展開 (MINERVA日本史ライブラリー)
- 作者: 鈴木淳
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 1996/03
- メディア: 単行本
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また、本書では、担い手、特に熟練工の問題に注目している。高等教育をうけた技術者に関しては、研究の蓄積があるためだろう。特に、第一章では幕末に各藩が展開した小銃生産によって金属加工の熟練工が多数養成され、それが廃藩後、多数労働市場に放出されたことを指摘する。また、日露戦争後にも、軍需によって膨張した設備・熟練工が市場に放出されたことを指摘。二度の過剰な熟練工の養成の影響が興味深い。
本書では、織物の機械を中心に多数の人名・企業名が出てくる。また、特に織物に関しては、素材や品種によって、相当複雑に分かれるので、そのあたりを把握するのが難しい(中世ヨーロッパの毛織物でも細かくやると死ねる)。結局、細かいディテールの点では、あまり理解できなかった。そのあたりは、今後の課題。今回は通読で精一杯だった。図書館で借りたが、買ってもいいかも。あと、索引が付けてあるのが素晴らしい。読んでいる途中でも、たびたび使った。
あとがきに、
筆者の最初の関心は昭和戦時期の兵器製造の限界にあった。その由来を追求するうち、日本における機械工業の歩み全体へと関心が広がっていった。
同じく伊藤隆先生は戦史をやると称して学部ゼミに入った学生があらぬ方向に転進して行くのを終始好意的に見守り、
とあるのが面白い。軍事マニアは、行くところまで行くと、生産や補給といったところに行きつくそうだが、この著者はまたすごい所まで行ったなと。ちょっと、にやりとした。