大場ひろみ・矢田等『チンドン:聞き書きちんどん屋物語』

チンドン ‐聞き書きちんどん屋物語‐

チンドン ‐聞き書きちんどん屋物語‐

 ちんどん屋の親方衆へのインタビューを中心に、若手へのインタビュー、歴史の検証などから構成された本。東京では、結構ちんどん屋さんって生き残っているのだな。熊本では、城下町まつりとかのイベントの時しか見かけないけど。芸能史に詳しければ、もっと面白いのだろうな。これだけ読んでも、十分楽しめる本ではあるが。明治末生まれを最高齢に、昭和ひとけた生まれ、その子ども世代と、時代の移り変わりが感じられる。写真も多く、用語の解説も親切。昭和30年代あたりの写真なんかは明らかに街並みが違う。
 飴売りや紙芝居屋との密接な関連、役者からの転向が結構多い、落語との関連、サーカス凋落後、楽士がたくさん流入した話など、芸能・興行との密接な関連がうかがわれる。あとは、パチンコ屋がお得意様という話。高度成長とともに衰退していくが、昭和天皇の死後の自粛がとどめを刺したという話。新しい世代がジャズを中心とするミュージシャンあたりから供給されているという。いろいろと興味深い情報がある。

―――その後、仕事のほうは。
澄子 昭和四〇年代だね、仕事が少なくなったのは。テレビよりも、交通でしょう。都電がなくなってから仕事が少なくなったよ。
五郎八 都電が走ってるころは、そんなにクルマ通らないじゃない。
澄子 みんな、なくなっちゃった。
p.197

 確かに道路利用の変化というのは、大きなダメージだったのかもな。この本の中の写真を見ていても、交差点で踊ってたりするし。

 戦後も、この長屋の状況は驚くべきことにさして変化がない。親方たちはちんどん屋のかたわら飴を売り、紙芝居をやり、おでんを売り、あるいは箱屋に勤めたりして生活している。また、近所の芸事好きの職人や商人がヒマなときにちんどん屋を手伝いに来るという関係は、長屋が取り壊され、彼らの多くが都営住宅へ入居するようになる昭和四〇年ころまで続く。p.310

 ここでは、居住環境の変化。