「全国初の「民営」刑務所誘致:経済活性化期待外れ:山口・美祢住民からは不満の声」『朝日新聞』06/10/19

 全国で初めて民間に運営を任せる刑務所の建設が、来春の開所を目指し山口県美祢市で進行中だ。かつて炭鉱で栄え、今は過疎化に悩む地域。市は地元経済の活性化を狙い、あえて誘致した。だが、そろばん通りにはいきそうにない。住民からは不満の声が上がり始めている。  (金子元希)


 市郊外の丘陵地・豊田前地区。甲子園球場7個分、28ヘクタールの敷地に、初犯で比較的刑の軽い受刑者千人を収容する「美祢社会復帰促進センター」が建設中だ。
 かつて炭鉱労働者用住宅があった地区で人口はピーク時の10分の1の約千人。目の前で暮らす西本寛さん(59)は父が炭鉱労働者だった。刑務所建設に不安を抱きながらも、「人口減に歯止めがかかり故郷が残るなら」と言う。
 住民の間で反対運動が起きたが、国は「地域が活性化する」、市も「消費が年7億4千万円増える」と説得し、04年1月に建設が決まった。市は、刑務所職員と家族約500人の居住などで人口減をくい止め、地域雇用を促進するといった将来像を描いた。
 だが、国はコスト削減を狙い、民間企業に建設から運営まで担わせる「PFI方式」を導入。東京の大手警備会社を中心としたグループが、国の想定を50億円下回る総事業費約493億円で落札。建設・運営の主導権も大手ゼネコンなどが握り、建設費約100億円のうち地元企業が請け負えたのは、9月までに市が把握した限りでは下請け分の3億円だけ。
 受刑者の食費も官営刑務所では1人の3食分は約520円だが、美祢は推定500円以下。「千人分の18年間の安定供給」という条件も課せられ、ある市議は「地元零細業者が入る余地はなかった」と嘆く。市議会は近く、国との直談判に乗り出す。
 刑務所運営会社の担当者は「雇用拡大に貢献しているし、定住職員の消費効果もある。地元からの受注も心掛けているが、民間がやる以上は安くする必要がある。長期的に効果を見てほしい」。法務省は「すべてを地元で調達するのは不可能だ。国としても総合的な観点での共生を図りたい」と説明する

 ちょっと古い記事だが、刑務所民営化と地元経済活性化の話。この記事では、開所前だが、現在はどうなっているのだろうか。500人が移住するから確実に経済効果があるのは確かだろうけど。
 中央の大資本が一番儲ける構造になっているのは確かなのだが。その点では、良くないシステムだな。政権交替でPFIとか民営化の動きはどうなっているのだろうか。