「防虫の遺伝子組み換えワタの畑:別の害虫が大量発生:中国」『朝日新聞』10/6/1

 特定の害虫に強くした遺伝子組み換えワタが栽培されている中国の畑で、別の害虫が大量に発生し、果樹など他の作物への被害も心配される状況であることがわかった。殺虫剤の使用を控えた結果とみられ、中国農業科学院などのグループが米科学雑誌サイエンスに発表した。
 このワタには、害虫のオオタバコガに有効な細菌毒素の遺伝子が組み込んである。中国で1997年に利用が承認され、2007年には380万ヘクタールまで栽培がふえた。栽培地帯の6省では、ワタ畑を発生源としていたオオタバコガによる害が、トウモロコシや大豆、落花生でも減るという効果も表れた。
 しかし、追跡調査したところ、組み換えワタの毒素が効かないカスミカメムシ類が、殺虫剤の使用が減ったワタ畑で増加。そこを拠点に、リンゴやブドウ、ナシなどの果樹園でも数を増やし、新たな脅威となっていた。
 海外の組み換え作物に詳しい農業環境技術研究所の白井洋一上席研究員は「殺虫剤を減らして、すぐカメムシ類が増えるわけではないが、じわじわと増え、発生が目立つようになる。その事態を防ぐには、継続的な監視と農薬散布などの対策が欠かせない」と話している。 (米山正寛)

 結局のところ、害虫の方が強いというか、生態系の複雑さの方が勝るというか。この手の害虫抵抗性の組み換え作物の利点に、農薬の使用量が抑えられるというのが挙げられているが、このような別の害虫の大量発生に要する農薬と合わせるとトータルでは、本当に減るのか疑問。これに、遺伝子汚染の問題も考慮すると、遺伝子組み換え作物にはどうしても不信感がある。害虫や雑草との軍拡競争に、人間は勝てないんじゃないかな。ほどほどのところで共存を模索するしかなさそうだ。


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 新たな不公平の創造って感じもするな。実際には農家はそれほどの恩恵を受けていない。むしろ、発展途上国では不利になるもを売りつけられている。