「使い捨ての脚本に光を:放送作家協会が保存活動:時代映した資料的価値/脚本家不在に危機感も」『熊日新聞』09/10/10

 テレビやラジオの番組制作を支える柱のひとつ、脚本。長く”使い捨て”にされてきた状況を改善しようと、日本放送作家協会は脚本を保存、管理する活動を続けている。しかし、最近では脚本家が「いない」映画も登場し、関係者の間には危機感が広がる。


 向田邦子倉本聡山田太一―。名脚本家らの手によってこれまで数多くの名作ドラマが生み出されてきたが、その陰で脚本そのものは意外に冷遇されてきた。


未収集のヒット作
 脚本家の市川森一が協会理事長に就任したのは9年前。その放送局にも過去の番組の脚本がまったく保管されていない実態を知り、すぐに他国の状況を調べ始めた。
 「その結果、ほとんどの先進国で文化的な資料として、公的に保管されていることが分かった」。2005年に保管施設の開設を目指して「日本脚本アーカイブズ特別委員会」を設置、国への働き掛けを続けている。
 協会の活動に賛同した東京都足立区は、臨時の保管場所として図書館の書庫を無償で提供。女優の三田佳子らから脚本の寄贈も相次ぎ、これまでに3万冊以上の脚本が集まったという。
 しかし、かつて一世を風靡した「てなもんや三度笠」やNHK大河ドラマ太閤記」など、1冊も収集できていない作品も多い。市川は「脚本は時代時代の風俗、恋愛、人間性などを反映してきた」と資料としての価値を強調する。


存在意義を無視
 脚本家の存在そのものを揺るがす事態も起きている。
 この夏公開の映画「アマルフィ 女神の報酬」(真保裕一原作)は本編やプログラムのクレジットに脚本家の記載がない。製作のフジテレビは「内容を改変したところ脚本を書いた原作者が辞退した」と説明。協会などは「脚本家の存在意義を無視するもの」とする声明を発表した。
 協会関係者は「観客がそれを疑問に感じないこと自体が、脚本全般が存在感を失ったことを象徴している」とやり切れない様子で話す。
 バラエティー番組にも”脚本”はある。「8時だヨ! 全員集合」(TBS系)などを手がけた奥山序ヘ伸は「同じギャグは二度と使えない。台本は番組が終わったらポンと捨ててしまう感覚だった」と明かす。
 放送とは本来、一過性のもの。それでも「脚本が保存されることで、目先の視聴率を追い掛ける制作者の意識も変わり、番組の質向上にもつながる」というのが協会の基本的立場だ。
 協会は今年で創立50年。放送祖を取り巻く環境は大きく変わったが、番組の土台を支える脚本家たちの活気が、テレビを面白くすることに変わりはないだろう。

 資料を保存して、そこから新たなインスピレーションを得るということそのものが、日本では少ないようにも思う。ちゃんと残して、そこから学ぶことは重要だと思うのだが。 そういえば、欧米のアーカイブスというか、史料を残していくという文化はどこに由来し、どのように発展してきたのかというのは、ちょっと気になる。近世の時点では、日本も欧米もそう変わらないように思えるのだけど。


日本脚本アーカイブズ
台本収集は官民一体で 放送作家協会が施設の整備訴え