「いびつな外国人研修・実習生制度:違法労働が常態化 縫製業など過酷なコスト削減 背景:「健全な労働市場崩す」」『熊日新聞』07/9/17

 天草市の縫製会社が受け入れた中国人実習生が「違法な過重労働」を訴えていた問題は、実習生が会社と社長を告訴する事態にまで発展した。この事件の背景を探ると、外国人研修・実習生制度のいびつな現状とともに、違法労働を常態化させてまでコスト削減に走る縫製業などの過酷な競争が透けて見える。


 「お金だけの問題じゃない。私たちも人間。もう我慢できない」。今回、告訴した実習生の女性六人は口々に訴えた、彼女たちは月の基本給六万五千円、残業料は一時間三百円で、大手ブランドの女性下着の縫製作業をしていた。労働は一日十二時間程度で休みが一日しかない月も。病気で休めば、違約金が差し引かれ、預金流用までされたという。
 全国で外国人研修・実習生の支援活動を続けている全統一労組の鳥井一平書記長は「基本給、残業料など、表面化した例は、どこでも一緒。低賃金の違法労働が“全国標準”になっている証拠だ」と話す。全国の労働基準監督署調査の二〇〇五年のまとめでも、調査に入った八割以上の事業所で残業代不払いや法定労働時間超過などの違法・違反労働が判明している。
 それでも、今回のように告訴にまで至るのは異例。鳥井書記長は「研修生は、地元の送り出し機関に保証金などを前借金する形で来日。そのため、文句を言って途中で帰国させられることを恐れている。ほとんどが泣き寝入り」という。
 研修・実習生の受け入れ数は年々増加。中でも縫製業など繊維・衣服製造業が全国で二割以上を占める。県内では〇五年の実習申請者五百五十一人のうち三百一人が同業の受け入れで、九州最多となっている。
 なぜ、縫製業が研修・実習生の受け入れを必要としているのか。四年前まで十五年間、天草地域で縫製工場を営んでいた経営者は「工賃低下が激しいからだ」と話す。
 もともと、中小縫製業は「発注元のアパレルメーカー、小売り、問屋などが利益を確保した残りで工賃が支払われる」弱い立場。それが、中国などとの国際競争が始まってからさらに低下。創業当初の工賃相場は小売り価格の10%程度だったのが、四年前には3、4%にまでなった。
 例えば「だれでも知っているブランド品」のスラックス縫製を受けたときは、四万五千円の小売価格に対し、工賃は千六百円。「厳しい規格に合わせるため丁寧な作業をして、一人一日頑張っても仕上がるのは四、五枚程度。とても採算に合わない」。それが、「売れ残り品は値崩れを防ぐために、焼却処分されたと後から聞いて、情けない思いをした」という。
 廃業前には、同業者から研修生の受け入れを勧められた。「『月六万円程度で一日十二時間、文句も言わず働く』との触れ込み。どう考えてもおかしいと思い断った」
 今では当時の同業者仲間から「あの時やめておいてよかったな」とうらやましがられる。「研修生を入れてもその分発注元から工賃を下げられる。みんな、借金の利息を払う程度の利益で、命をつないでる」
 それでも、経営側からの研修・実習生の受け入れ拡大を求める声は強い。九州財界がバックのシンクタンク九州経済調査協会は、本年度の「九州経済白書」で、経営者アンケートなどを基に「縫製業など過疎地の製造業では労働力の確保が既に困難になっている」と分析した上で、活性化策として「研修・実習生制度の緩和が必要」と提言している。
 しかし、過疎地の労働市場を見れば、この分析には首をひねる。今回の事件の舞台となった天草地域の本年度の有効求人倍率は〇.三八(四−七月)。縫製業だけに限っても、フルタイムの求人数十四(七月)に対し、求職者は四十一。パートは同ニ(同)に対し同十七。求人票には軒並み時給六百十二円という県最低賃金の下限が並ぶ。
 県内の縫製業を含む衣服製造の事業所数も、実習生数の増加に反比例して減少。研修・実習生の受け入れが本格的なカンフル剤にはなり得ていないことがみてとれる。
 熊本学園大の荒井勝彦教授(労働経済学)も「現状では制度の緩和よりも規制の順守が優先されるべき」と話す。「違法な低賃金労働が広がれば、当然、日本人の賃金相場も下がり、健全な労働市場が崩れる。研修・実習生に対するルールの順守は私たちにとっても無縁ではない」
 さらに、鳥井書記長はこう指摘する。「労働問題だけでなく、研修・実習生への暴力やセクハラなどの人権問題も多発している。普通の経営者だった人たちが『安くて文句を言わない」労働者を手に入れて、おかしくなっている。日本社会の健全さが崩壊し始めているのを感じる」  (泉潤、岩下勉)

 なんというか呆れるばかり。労働市場を破壊し、奴隷労働などの人権侵害を誘発し、中国の悪徳ブローカーを肥え太らせる。どこにも、良いところがない。パスポートを取りあげるとか、かつてのフィリピン人ダンサーの問題と同じような状況。このままだと、また人身売買国家と名指しされることになるだろうな。
 熊本は、農家でも問題が起きていたり、日系ブラジル人に評判が悪かったりと、なんか移入労働力がらみでは、よく問題を起こしているような印象。もしかして、熊本って「心の僻地」なのか… 
 あと、天草で縫製業が盛んと言うのも興味深い話。どういう経緯で、広がったのか。ネット上では、外国人研修・実習生がらみの話題ばかりで、地場産業としての情報はほとんど出てこない。縫製業の熊本的統計によると、天草市上天草市で、46事業所、1000人ほどが従事しているから、それなりに存在感のある産業なのだな。論文としては、わが国周辺地域における「非自立的産業」の展開と地域労働市場の構造 : 熊本県天草地方を事例としてが関連するのだろうか。