日本はそれほどダメではないということを意地でも認めたくない人

anond.hatelabo.jp
 日本人のほとんどに該当すると思うが、文系的知というか、制度設計という高度な専門業務に対する軽視が酷いなと思う今日この頃。
 これまでも、理系のノーベル賞受賞者が、言って見れば「軌道エレベータに使える素材をいまだに作れない化学はダメぽ」レベルの放言を繰り返してきたわけで。まあ、利根川進あたりよりは、ましかもしれないが。そもそも、根岸氏自身が学部を卒業後、メーカー就職、アメリカで博士号取得、その後のアカデミック・キャリアもすべてアメリカのもの。日本の教育現場については、全く経験がない。その上、受験も学部生活も、50-60年ほど前。その時代とは、受験や大学が直面している問題が全く異なる。そういう人がちょろっと質問に答えた程度の談話が、ノーベル賞受賞者という権威によって影響力を持ってしまうというというところに問題があるのではないか。
 あと、「基礎をたたき込むことの重要性」については同感なんだけど、今の教育の問題点は、受験の勉強がその後の人生に必要な「基礎」になっていないとか、落ちこぼれをざぶざぶ出しているのは制度としてどうかとか、全入時代に大学教育の社会的価値をどう問いなおすかが問題なのだと思う。また、受験制度についても同学年人口の50%以上が大学へ進学する状況では、かつてのような選抜システムは機能しようがない。あるいは大学入学への動きをドライブする社会通念とか、色々と考慮すべき要素がある。
 今回の根岸発言が批判されるとすれば、相も変わらず、教育「制度」の問題をワントピックで語ろうとする姿勢にある。「制度」を「改善」するには、様々なステークホルダー、あるいは日本社会の多様性、教育に関する社会の意識、絡み合ったさまざまな要素を解きほぐしていく、難しい課題なのだ。酒場の放言は有害でしかない。
広田照幸・伊藤茂樹『教育問題はなぜまちがって語られるのか?―わかったつもり」からの脱却』