日本考古学協会の蔵書海外寄贈問題:臨時総会の結果に関連するリンク

呆れ果てた臨時総会 (私的な考古学)

 いくら臨時総会で都合がつかなかったとしても、100人程度しか集まらなかったそうで。大半が議決行使書だったようだ。単純に状況を凍結しただけの模様。しかも、会場での採決では、寄贈反対側負けているという。実際のところ、このくらいの熱意で、何百万もの費用負担と大量のマンパワーがかかる活動を遂行できるのか疑問。
 実際のところ予算の組み換えを含む以上、現執行部がそのまま継続というのは、話が通じないと思う。
 http://twitter.com/lantan2011/statuses/27580745628に県立川越図書館が閉鎖されて空いているってあるけど、ああいうの賃借するだけで、毎年いくらかかるんだろうね…

日本考古学協会2010年度兵庫大会・臨時総会、の巻

 蔵書の内容の話と電子化と著作権の問題。

事実関係でいいますと、日本考古学協会の蔵書は六万冊程度にすぎず、しかもその源泉は自治体の寄贈や大会時の書籍交換の際の「供出」などに頼るところが多く、体系的な収集がおこなわれてきたわけではない。もちろんそこには他のところにはない本も入っていないわけではないし、日本考古学協会蔵書の価値を貶めるつもりはないのですが、どう贔屓目に見ても唯一無二の文化財的なコレクションとはいえない。その他の研究機関には、日本考古学協会の倍から数倍の巨大コレクションをもつところがある(私のささやかな個人蔵書〈報告書だけではないが・・〉ですら、二万冊以上はありますから。その中には鎌倉時代の古文書、江戸時代の考古学史々料といった唯一無二のものも僅かには含まれていますし、戦前の考古学関係図書といったやや珍しいものもある程度はあります)。奈良文化財研究所は30万冊で日本考古学協会の実に5倍、橿原考古学研究所は15万冊で2.5倍です。

 蔵書の構成の話。こういっちゃなんだけど、こういう表現をされると、大したことない感じだ。ただ、江戸時代の考古学史史料や鎌倉時代の古文書の国外流出はまずいと思うが。 結局のところ、蔵書がどんなものかわからないまま観念的に進んでいるところがある。中身がよくわからないからバルクで処分せざるを得ない。中身を整理するには時間と金がかかるし、その場合価値のない部分をどう処理するかという問題も出てくる。特に系統的に収集していないというのが、結構問題だな。(追記:コメントを受けて訂正。確かにこれは誤読だな)


 あと、後半の著作権の問題。電子化をする場合は、その報告書の各部分について、著作権者を探して許諾を得なければならないという壁。古い本は電子化なんて考慮していないから、そのあたり面倒だろうな。任意団体の類では負いきれない負担なのか。

寄贈反対派の意見

文化庁文化財部記念物課監修 2010 『発掘調査のてびき -集落遺跡発掘編-』 同成社のコメント欄参照。

臨時総会の場では、7人の協会員の方々による緊急提案が示されました。そこで提案された5項目「提案 蔵書を国内で保管・活用するために」 1.特別検討委員会の設置 2.協会員に対する意思確認の徹底 3.セインズベリー日本芸術研究所への対応 4.(仮)国立考古学情報センター設立への取り組み 5.原点に戻り、冷静かつ建設的な議論を というのがこれからなすべき当面の目標となるかと思います。

 今のところ、理事の人の方が迅速かつ熱心に情報を発信しているように見える。「具体案」という点では、反対派がどうしたいのか、その資金的裏付けについての発信が劣っている。上記引用も、具体的な内容は分からない。意見書の執筆者のなかで、コンスタントにブログを書いているのも、第2考古学 2010 の中の人だけのようだ。


 具体案としては、日本考古学協会蔵書の海外放出に反対する(声明)のコメント欄の

まず協会年間予算配分を根本的に考え直し、所蔵図書の基礎整理(書誌データの入力・バーコードの添付など)を行なう人的措置を行なう。次にOPACなどの検索ネットに搭載し、会員始め一般市民の方々を含めた利用上の利便性を高める。以上は5〜6年の中期的展望のもとで実施する必要があろうかと思います。この間に個人・組織・企業など広く社会に呼びかけ、ふさわしい収蔵場所および金銭的援助(ネーミング・ライツを含む)を求め、恒久的な利用スペースの確保に努める。そのためにも協会内部をはじめ、外部有識者を含めた「協会所蔵図書有効利用検討委員会」を設置し、議論の経緯など極力情報公開に努め、意思決定の公開性を高める。
by 伊皿木蟻化(五十嵐彰) (2010-06-13 19:40)

がそれかな。情報や議論の蓄積の格差が大きくて、生煮え感があるが。