盛本昌広『戦国合戦の舞台裏:兵士たちの出陣から退陣まで』

戦国合戦の舞台裏 ?兵士たちの出陣から退陣まで? (歴史新書y 10)

戦国合戦の舞台裏 ?兵士たちの出陣から退陣まで? (歴史新書y 10)

 題名の通りの書物。大規模な決戦の周辺の話。戦争の決断とそのための情報収集、軍隊の動員と集結、軍隊の移動路と移動中の宿泊の問題、兵糧の輸送、陣地での生活から陣形の話、戦闘後の撤収まで。まさに、合戦の周囲を網羅している。ただ、私は戦国時代の合戦そのものがよく分からないという問題が… 近世のヨーロッパみたいな整列して戦をやっていたわけではなさそうだし、そもそも雑多な小単位の集合体であった戦国時代の軍隊はどのように戦争をしたのだろうか。考えるとよく分からん。なんかおしくらまんじゅう的な光景しか想像できない。
 あと、東国の北条・上杉・武田関係の史料を主に使用している。戦国時代の研究では、東国の史料が使われることが多いが、これはなんでなんだろう。残存状態の問題か、あるいは単純に史料の発掘とアクセスに地域差があるのか。
 個人的には最初の方がおもしろかった。緊急事態には太鼓や鐘、ホラ貝などが鳴らされ、それで人々は返事を察知し、集まる。また、戦国大名は各地から来た注進状を分析し、意思決定を行う。動員が決まれば、「陣触」が各地を回って集結地を知らせ、集結地で「着到」を行って各々の兵力を確認する。
 進軍を開始すれば、今度は宿泊場所が問題になる。「陣取」と称してあちこちに宿泊するわけだが、押しかけられる方は迷惑だから大名と交渉して禁制を確保しようとする。このあたりのせめぎ合いが面白い。街道筋の集落には、戦時には軍勢が押しかけて大変なのだろう。京都などでは、主に寺が有力者の宿泊地となっていた状況が明らかにされる。