殷墟にて

殷墟にて | 学退筆談

それにしても思うのは、殷代が実に残酷な時代であった、ということです。大量の殉死、人間の頭を盛るための青銅器。大量の人骨を見ていると、この時代、どれだけ人命が軽んじられていたのか、いやでも思い知らされます。

 うーん、人の命にマジカルな力が認められていたからこそ、殉死や首狩りの風習があったのではないだろうか。食人には相手の力を取り込むという意図があったり、南米の人身御供も人命が最高の捧げものだからこそと言える。単純に残酷であったのかどうか。
 あまりに現在の見方にひきつけすぎた視点なのではないか。この時代の論理というのを探求する必要があると思うし、この大量の遺体がまさにその糸口なのではないか。人命が軽んじられているというなら、何百万もの人命を消費した20世紀の2度の世界大戦に勝る残酷な時代は他にないわけで。