小池滋他編『鉄道の世界史』

鉄道の世界史

鉄道の世界史

 とりあえず、長い。読んでも読んでも、読み終わらないという… さすがに700ページ超えは半端ない。確かめてみると、一週間以上格闘していたことになる。途中で、いろいろと寄り道もしているが。
 内容は、世界各地の鉄道の歴史の概説。ヨーロッパ各国から、アジア・アフリカ・オセアニアまで解説されているので、世界全体の見取り図を得るには便利。感心することに、索引もあるので、どちらかというと引いて使うべき本。ただ、それぞれの国や地域を担当した著者が、経済史家、鉄道ライター、実務経験者など、出身母体が違うために、歴史観などで統一性に欠けるような気も。国際経済的な観点から見れば、一国ごとに縦割に記述していくのには限界があろうし。ヨーロッパ域内では、相互作用をもっと重視すべきだったのではないだろうか。
 しかし、中東やアフリカ、南米あたりのあまり知らないような場所まで、解説されているのが素晴らしい。鉄道と鉱業が歴史的に関係が深かったのは確かだが、植民地、特にアフリカの鉄道が資源積出に特化して、地域住民の事をまったく考慮していない状況。フィリピンの鉄道が、スラム街や不法利用で壊滅した状況。アメリカやロシアの貨物輸送を中心とした鉄道の状況などが興味深い。
 逆に、日本などは非常に旅客輸送の機能が高いのが特徴のようだ。戦後になって、都市鉄道に大規模な投資が行われたのも一つの理由なのだろう。インドや中国など、近年に鉄道が活発な地域は、都市の急拡大に伴って都市鉄道が整備されている地域のようだし。まあ、都市内に巨大なハイウェイを建設するより、地下鉄や高架線の方が、なんだかんだ言って安上がりなのだろうな。