PISAのスコアについて (内田樹の研究室)

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超領域的・超国家的なエリート集団に社会的リソースを蓄積することを優的課題にしている人たちはたぶんPISAの結果にはあまり関心がない。
PISAに異常に高い関心を示すのは、国民国家こそ自分が帰属すべき究極の場であると信じている人たちである。
アジアの人たちは、たぶんそうなのである。

たぶんPISAのスコアは、その国の「国民的統合度」に相関する。

PISAのスコアを私は毎回興味深く眺めているのであるが、このスコアにはたぶん次のようなさまざまなファクターが関与している。
(1) その国の階層化の進行度
(2) その国の国民的均質性の高さ
(3) その国における資源配分のフェアネスの程度
(4) その国の隣国との軍事的・外交的緊張関係の有無
(5) 「華夷秩序先富論」(中国)や「先駆的エリートによる一点突破全面展開戦略」(韓国)のような資源の傾斜配分システムについての伝統的国是の有無
日本の教育行政の人々や教育評論家は「ゆとり教育」がどうしたというような瑣末な論件に学力問題を落とし込んで論じているが、それほど簡単な話ではないと私は思う。



 このあたりは結構、正鵠を射ているのではないかと思う。だいたい「教育論」いうても、大概酒場の放談レベルのものばかりだしな。
 そもそも、PISAのテストの背後にある人間観は、ある意味啓蒙思想時代の「市民」のリバイバルといっていいもののようだし。その点では、単純な学力の問題ではないだろうな→福田誠治『競争やめたら学力世界一:フィンランド教育の成功』(ISBN:4022598972