高橋正樹『破局噴火:秒読みに入った人類壊滅の日』

破局噴火-秒読みに入った人類壊滅の日 (祥伝社新書126)

破局噴火-秒読みに入った人類壊滅の日 (祥伝社新書126)

 上の本の隣に並んでいたので、ついでに借りてきた。前半は噴出物が100立方キロ以上にもなる巨大な噴火が、日本国内で起こりうること。阿蘇姶良カルデラのような、九州の広い範囲を火砕流堆積物で覆い尽くし、日本全国に分厚く火山灰を積もらせるような大規模噴火が過去に発生し、それから次の噴火が起こるに十分な時間が経過していること。そのような大規模噴火を起こしうるカルデラ火山は九州と北海道に偏って分布していることなどが指摘される。危惧に足るだけの間隔が開いていて、懸念は当然だと思う。だが、火山の噴火は時間経過にどの程度拘束されるのか。噴火の間隔はかなりばらついているように見える。造山活動の活発化など、より広い条件の中で検証する必要があるのではないだろうか。むしろマグマだまりの大きさなどのほかの指標から、具体的な対応を考えるべきなのではないだろうか。
 後半は、世界規模の気候変動を引き起こす「スーパーボルケーノ」の話。1000立方キロ超レベルの噴出物を出し、大陸レベルで火山灰をバラまき、世界の気候をも寒冷化させる超巨大噴火。アメリカのイエローストーンとロングバレーの両カルデラインドネシアのトバカルデラなどが紹介されている。タンボラ火山の1815年噴火では、同年夏が来なかったことを指摘して、超巨大噴火では数年間の寒冷化の可能性が指摘されている。確かに、インドネシアからマレーシアを覆い尽くすような巨大な噴火が起きれば、日本はエネルギー輸送が止まり、食料生産の停止で飢える可能性が高い。そのような事態にどう備えるか。災害の規模が巨大すぎて、なすすべがないような感じだが。あと、生態系に破局的気な影響を与えるというが、この噴火で大量絶滅が起きたとも聞かないし、そのあたりはどうなんだろうな。


 以下、メモ:

 最後の噴火(超巨大噴火や破局噴火)からの経過時間が長いほど、またカルデラ内火山の火口配列が環状か不規則であればあるほど、そしてカルデラ内火山噴出物の化学組成が珪長質であるほど、新たな超巨大噴火、もしくは破局噴火を起こす危険性が増すことになる。
 こうした観点でみると、いちばん危険性の高そうなのが屈斜路カルデラ、次に可能性がありそうなのが阿多カルデラと洞爺カルデラとなる。
 可能性が低そうなのが支笏カルデラ、十和田カルデラ阿蘇カルデラ、、鬼界カルデラである。姶良カルデラはどちらともいいにくい。また小説『死都日本』の舞台となった加久藤(霧島)カルデラはひょっとするとダークホースかもしれない。
 ただし、この分析は、いくつかの基準のみに従って、大規模カルデラ火山の危険性を検討してみた結果であって、あくまでひとつの「見方」を示したにすぎない。
 残念ながら、現在の火山学は、これ以上のことを科学的にいえる段階にまで至っておらず、このあたりが限界である。したがって、もしかすると、可能性がい低いと判断したカルデラ火山から、超巨大噴火を含む破局噴火を生ずることがあるかもしれない。
 せめて、とりあえずは、大規模カルデラ火山の地下構造の精密物理探査くらいは実施して、どの程度の量のマグマが溜まっているのかを推定しておくことが望まれる。p.101-2

 うーむ。失礼ながら、火山学ってあんまり進んでないのだなという印象。