「日本酒新スタイル」『朝日新聞』10/11/7

 日本酒の伝統の殻を破り、新たな発信方法を試みる動きが出ている。「SAKE」を愛する米国人有志が大規模な利き酒パーティーを催したり、蔵元が再利用のワインボトルに詰めたり。国内消費が低迷するなか、洗練されたイメージを掲げて魅力の再発見につなげる狙いだ。(高橋美佐子、見市紀世子)


米国発愛飲家の集い
 東京都品川区にあるホールで2日夜、日本酒を愛する米国人のNPO法人「ジョイ・オブ・サケ」が設立10周年の記念イベントを開いた。2001年にハワイで第1回の利き酒会を企画して以降、サンフランシスコやニューヨークヘも拡大。「節目のパーティーはSAKEの故郷で」と日本開催を実現させた。
 当日は329銘柄が出品、日米両国のレストランや居酒屋12軒がおつまみを提供した。入場料8千円と高額にもかかわらず、ハワイアンバンドの生演奏が流れる会場には国内外から約千人が押し寄せた。
 「ジョイ・オブ・サケ」代表のクリス・ピアスさん(63)はホノルル在住。きっかけは30年前、現地で日本酒醸造に励んでいた故・二瓶孝夫さんとの出会いだ。「二瓶さんは人一倍の情熱家。初めての味に戸惑う僕に、『一番大事なのは全体のバランスと調和。味と香りはその次に来る』と丁寧に教えてくれた」と振り返る。博識な二瓶さんに導かれ、のめり込んだ。
 1994年に二瓶さんが他界した後も仲間と普及に努め、老舗の蔵元たちとの付き合いを深めてきた。「米国ではおしゃれなセレブが好む飲み物。食事と一緒に様々な銘柄を楽しむアメリカンスタイルで、日本人もSAKEを再発見してほしい」
 行きつけの飲食店でチケットを購入して訪れた会社員、村瀬りか子さん(37)は「貴重なお酒がそろっていて感激。香りのいい純米酒は洋風の食事にも合う。日本酒は万能だと改めて感じます」。飲み友達とともに、酒の魅力を堪能したようだ。

老舗はワインボトル詰め
 酒のイメージを変える試みに、老舗が取り組んでいる。創業129年になる新潟県新発田市の蔵元「菊水酒造」は、本醸造辛口をワインボトルに詰めた「スタイルボトル」を売り出した。
 日本酒の一升瓶は洗って繰り返し使われるのに、おしゃれなワインボトルはほとんど再利用されない。高澤大介社長(51)は「『安い日本酒は紙パック』という常識を打ち破りたい」と目をつけた。72Oミリリットルで690円と価格を抑えた。
 業者からワインボトルを集め、一升瓶の洗浄技術を活用。スクリュー式とプラスチツク栓の2種類でフタをし、ボトルの口が空気に触れないようフィルムをかける。ラベルは1枚ずつ手で張っている。
 機械なら1時間で約3千本詰められるが、手作業のため50-100本程度。当初は社員に「手間がかかる」と反対されたが、「『良い米を使って腕の良い杜氏が造った』というだけでは、消費者には楽しんでもらえない」と、高澤社長が尻をたたいた。
 イベントや対面販売が可能な酒屋を中心に卸す予定。ネット通販もある。売り上げの一部は、トキの保護支援に充てるという。

 大吟醸ブームの前と後でどのように変化したのだろうか。同様な意味で、泡盛もどうなったか興味があるな。
 そもそも、日本酒の飲酒文化が貧しかった、あるいはある時代に貧しくなったというのが問題なんだろうな。多様な飲み方が出来なくなっていた。このあたり坂口謹一郎の著作を当るべきか。
 しかし、ワインボトルに詰めるってのはおもしろいアイデアだな。