「大矢野の「大戦史」後世に:町の出来事、住民体験談…:郷土史研修会が編さん:上天草市」『熊日新聞』10/11/28

 旧大矢野町に軍用船を建造する工場があり、「ケイカクセン」と呼ばれていたという話が興味深い。大内建二『戦時標準船入門』asin:4769826486では、木造機帆船が標準船として全国の木造船造船所を動員して建造されたそうだが、これもそうなのだろうか。

 上天草市大矢野町郷土史研修同好会(切通唯市会長)が編さん作業を進めてきた、第2次世界大戦にかかわる同町の出来事や住民たちの体験談をまとめた記録集が完成した。
 同会の理事約20人で昨年7月から、古老らへの取材や資料収集を進めてきた。寄付金を基に自費出版する計画だったが、市が発行元になり100万円の出版事業委託を受けて製本した。タイトルは「太平洋戦争戦中・戦後の証言と記録」。
 切通会長(76)によると、同町に軍用船を造る工場があったことは知られていたが、今回の調査で法務局に当時の登記簿が残っていたことが判明。さらに、造っていたのは「ケイカクセン」と呼ばれていたことも突き止めた。日本軍の燃料貯蔵施設跡も写真入りで多数紹介しており、同町が軍事利用されていた状況を浮き彫りにした。
 空襲のあった場所や戦後、海に投棄された軍の砲弾が海岸に漂着して爆発した場所なども地図で記す労作。遺族会の協力で同町の戦没者約940人すべての氏名と戦没年月日、場所を掲載した。
 切通会長は「戦争にほんろうされた島民のことをあらためて思い知った。身近な所での出来事を通して、平和の尊さを若い世代の人に感じてもらいたい」と話している。
 A5判、241ページ。500部印刷。希望者には1500円で頒布。市教委社会教育課Tel 0969(56)1111 (岡本幸浩)