菊池良生『傭兵の二千年史』

傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

 一言で言わせてもらおう。薄い!!
 同じ著者の『戦うハプスブルク家』が結構面白かったので、手を出してみたのだが、期待はずれも良いところだ。17世紀の中欧についてなら、それなりの密度で書けても、そこから外に出ると、知識も史観も足りていない感じ。あとがきで書いているが、種本4冊ってのは、いくらなんでも少なすぎる感じ。それで、国民国家の形成の問題に踏み込もうとは。近年は軍隊と社会、軍隊と国家といったテーマでの研究も進んでいるのに…
 ランツクネヒトから18世紀の絶対主義国家での傭兵については、下敷きにした本のおかげか、それなりにおもしろいが。


 本書でも取り上げられているが、クセノフォンの『アナバシス』。あれを読むと、あの時代の戦争がどんなものだったのか、余計分からなくなるな。キュロスと兄王の決戦のシーンなんか、無秩序な混戦にしか見えないし。そもそもギリシア人重装歩兵部隊は、独走して行っちゃうし。あと、脱出行にしても、多数の女性や奴隷などの非戦闘員を抱え込んで、荷物も大量に持っていたみたいだし、戦争の時間感覚ってよく分からないところがある。