窰洞考察団著『生きている地下住居:中国の黄土高原に暮らす4000万人』

 黄土高原に存在する地下住居「窰洞(ヤオトン)」について、さまざまに考察した本。多数の著者が、さまざまな側面から書いているだけに、全体的には食い足りない感じかな。調査の苦労話から分類、作り方、住環境、生活や家族制度と住居の形など、大よそ住居に関するトピックは網羅されている。個人的には、生活や利用を扱った後半が面白かった。あと、本書は、1980年代に調査も出版も行われているが、なかなか調査の許可が下りないとか、空撮するための機材を持ち込めず凧から撮った話など、今からはちょっと想像できない状況が描かれている。デジカメだの何だのと機材が変わり、中国も改革開放が進んだ現在では、もっと楽に調査できるのではないだろうか。分からないが。
 ヤオトンには、単純に黄土の崖を掘った靠山式(カオサン式)と平たんな土地に四角の穴を掘り、そこから横穴を掘る下沈式の二種類がある→中国の地下住居・・・黄土高原のヤオトン。1980年の時点では、黄土高原で4000万人が、ヤオトンに住んでいたそうだ。現在は急速に衰退しつつあるようだが。近代化にともなって、家族や生計が変わってくれば、住居も変化せざるをえないということなんだろうな。地下住居だけに湿度はかなり高い状況だそうで、やはり乾燥地帯ならではということのようだ。物資も豊富になってきたし、コンクリとかの資材で改良して、通風をよくすれば、夏涼しく、冬暖かい、エコな住宅になりそうだが。
 地下住居というのはロマンだと思うけど。


 以下、メモ:

 翌朝布団の重みで目が覚める。見ると布団が湿気を吸ってぐっしょり濡れている。昨晩は気づかなかったが、窰洞内はかなりの高湿度のようだ。まだ重いまぶたをこすりながら外に出ると、簡易ベッドで涼しそうに寝ている現地の人々の姿が朝もやのなかから突如として浮かび上がってくる。思わず息をのむ。p.119

 宿泊体験記の一節。やはり湿気が最大の敵なんだな。


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黄土高原で私が泊まっていたヤオトン