- 作者: 宮越光昭
- 出版社/メーカー: 北越出版
- 発売日: 2009/12
- メディア: 単行本
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デンプンをなんらかの形で糖分に分解するという過程は、酒造と共通するが、日本酒が糀を使うのに対して、飴は麦芽の酵素を利用して糖化を行う。そう考えると、なんで日本では麦芽を利用した酒造が発展しなかったのが不思議に感じる。
本書は、前半は麦芽によって糖化を行う飴の歴史をたどり、後半は、著者の経験や伝承をもとに、大杉屋惣兵衛の明治から現代にかけての変遷やどのような工程だったかなどを語っている。
麦芽による飴作りは、古代には伝来し、中世以降各地に拡散したこと。北陸地方に関しては、多様な飴文化が広がる朝鮮半島からの影響を考えられるという。近代にはいると砂糖の利用が増大し、砂糖を煮詰めた有平糖や澱粉酸糖化による工業的な飴の生産によって、伝統的な飴生産者は圧迫されていったこと。味付けや風味づけなど料理に利用されていた在来の麦芽飴は工業的な飴にとって代わられ、名物としてブランドがある物だけが残ったという。あとは、新潟から東北方面の飴の習俗など。
後半は著者の実家である大杉屋惣兵衛の仕事や飴屋の日常を描いている。日常の業務や納入先。軍隊への納入や軍人の土産物としての需要という話が興味深かった。製品としては粟飴、翁飴、笹飴などが紹介されている。軽井沢の外国人の需要から始まった浅間ベリーのジャムを混ぜた浅間葡萄飴が美味しそうだったが、今は浅間ベリーの採集が禁じられて生産不可能だとか。あとは、戦中の状況だとか。第二次世界大戦の戦時体制は日本の「伝統」を壊しまくったよね…
さて、近いうちに朝鮮飴を買ってくるか。