デビッド・マコーレイ『カテドラル:最も美しい大聖堂のできあがるまで』

カテドラル―最も美しい大聖堂のできあがるまで

カテドラル―最も美しい大聖堂のできあがるまで

 『キャッスル』と同じシリーズ。フランス北東部の架空の都市に、大聖堂が出来上がるまでの話を描いている。多分、中学生くらいの頃に一度読んでいるのだが、ほとんど印象に残っていない。今読んでみると、非常に大聖堂の建設の過程がよく描けていると思うが、建造物に関する予備知識がないと難しいかもな。アプスとか、控壁とか、飛梁とか、トリフォリウムとか、子供にはピンと来ないかも。城ほど、中二心を刺激するものでもないし。
 舞台となったシュトロー市は、アミアンルーアン、ボーヴェが近くと言うことで、フランスの北端、英仏海峡の沿岸地域に当るのだろうな。計画から完成までに86年というのは、この手の大聖堂の建設期間としてはかなり短いのではないだろうか。興味深く感じたのが、作中での街並みの変化。最初は藁ぶきの家ばかりだったのが、完成することには板葺きか瓦ぶきの鱗状の屋根の家に変わっているのが興味深かった。ただ、石造りの建物が大聖堂以外に見当たらないのは、ちょっと疑問。司教の直接支配下にあっても、大商人や騎士から成る都市貴族層はある程度大きな屋敷をもっていたのではないだろうか。あと、市庁舎の類も見あたらないし。まあ、大聖堂を目立たせるための演出なんだろうけど。ラストなんか、スケール無視だろと思ったくらいだし。
 巻末の解説が、本文を見ていまいち腑に落ちなかったところを補ってくれて、良かった。