伊都工平『犯人は夜須礼ありす』

犯人は夜須礼ありす (MF文庫J)

犯人は夜須礼ありす (MF文庫J)

 うーむ、なんとも伊都さんらしい作品だなとしか。これは単発ものなのだろうか。エロハプニングも含めて、割合きっちりまとまった感があるな。ボディランゲージで相手の意図を読み取れる主人公が、狂言殺人を起こした天才的な能力をもつ同級生をかくまう話。何が起こったかはかなりあっさりと開示されれるが、その「真相」が二転三転とぐるぐるねじれて、最後は神様の出現の話に。とりあえず、ありすさんがかわいくて、なかなかよろしいのでは。主人公もヒロインも破綻しまくっているけど。
 人間を「情報を入手し、判断し、出力するもの」ととらえ、情報収集コストを抑えるためのショートカットするために「神」を設定する。「情報源=神」を押さえて、人類の精神活動を支配、神の如くふるまおうっていう発想がすごいな。ただ、生物として考えるなら、少数の人間が神の如くふるまうってのは、人類の多様性を減少させて、生存可能性を狭めるように思う。生物としては「多様性」こそが重要なわけで。