アイドルマスター 第24話「夢」


 二週間のレイニー止めが終わった。長かった。
 バラバラになっていく765プロのアイドルたち。その中でもがく春香。前半は、前からの続きで、非常に非常にストレスがたまる展開。冒頭の「私の、私の夢はどこ。つかみかけた夢がこぼれおちていく。サラサラと音をたてて」を地で行く展開が苦しい。劇とのシンクロや孤立した心象を暗示するような画面。画面全体が暗いし。
 で、最終的にはぽっきりと折れちゃう。美希のいうことも正論で、多くの人に責任を持っていることは確か。でもねえ。
 そして、春香の不在、そしてそれぞれが孤立し、歯車が狂っていく状況。他の皆も不安な顔をするようになる。ここまでで、前半終了。


 後半は、そこからの回復の展開。気付きと勇気いったところがキーワードか。直球だけど、それだけにぐっと来るものがある。
 引きこもる春香。自分自身の原点を見失った状況。そこからから、冬馬との会話、子供たちとの会話を通して、さらには幻影を通じた自問自答を通して、見つめ直す。いっしょにいることが仲間の負担にならないか不安に思う気持ち、そしてそのビジョンを共有できていないのではないかという恐れ。それを乗り越える勇気。
 一方で、他の皆も少しずつ動く。プロデューサーの病室を訪ね、行動することへの自信がないと吐露する千早。それに対して、大事なものは同じだと千早の肩を押すプロデューサー。自分から動こうとする千早。ちひゃーも大きくなったなあ。あと、最初は気遣われる方だったプロデューサーが、いまや765プロの精神的支柱となっているのが感慨深い。
 そして、全員の集合。ここで千早の話を聞いて、765プロをまとめるという重荷を春香に丸投げしていたことにみんなが気付くと。前回の「生すか」終了を知らされた時の温度差に現れていたが、765プロの居心地のいい空間というのは、自然に享受される物ではなく、意識的に維持されていたこと。それに気付く。真の「誰かに相談するとか考えもつかなくて」というセリフに端的に現れているように、いままでは誰かに相談する必要もなかった。
 ここでやっと、「みんなが一緒にいること」が、春香とPだけに共有されていたものから、皆に共有されるビジョンになった。
 13話でもそうだったが、独自に行動して、最終的には他の皆と同じところにやってくる美希の立ち位置というのも興味深い。あと、全員が集まる所を、簡単に集まったと考えている感想を見かけるが、いままでの状況から考えても、そのために払われた努力が描写されていないだけと考えるべきだろう。律子を初め全員が個人の仕事優先にある程度疑問を持ったからこそ、実現され得たと考えるべきではないだろうか。


 春香の仲間を信じる勇気、千早の自分で動く勇気、そして765プロの仲間が自然に成り立っていたものではなく、相当な努力を払って維持されていたし、それを意識しないと維持できないという気付き。
 そして、生中継を通じた呼びかけと、事務所へ走る春香。で、最後の「ただいま」「おかえり」。
 確かに幻影といい、タイミングの良い生中継といい、ご都合主義な展開なんだけど、心象が世界に投影されるような演出は嫌いではない。他のメディアでやったら鼻につきそうだが、ここでは許容されるのではないだろうか。想いと世界がシンクロする展開を、何度も直球でやってきたからこそ、受け入れられるというのもあるのかもしれない。


 とりあえず、個人的には大満足。いろいろと賛否両論あるみたいだけど。ベタな展開を何度も何度もやって来たわけだし、それはそれで良いと思っている。




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