ロバート・フォーチェック『連合艦隊vsバルチック艦隊:日本海海戦1905』

連合艦隊vsバルチック艦隊―日本海海戦1905 (オスプレイ“対決”シリーズ)

連合艦隊vsバルチック艦隊―日本海海戦1905 (オスプレイ“対決”シリーズ)

 図書館で見かけて、西欧の人間が書くとどういうタッチになるのだろうかとおもって、借りてきた。しかし、このシリーズ、さすがに3000円近くって値段は手が出しにくいなあ。ボリューム的に、1500円くらいで納めてほしいところだ。
 本書は日本海海戦に至る、ロシアと日本の戦艦の整備の状況。その間の技術の進歩とそのような技術から何を選んだか、その影響。艦隊の温存を図るロシア太平洋艦隊と早期撃滅を狙う日本海軍のせめぎ合いは、当初は日本側に不利に進んでいた状況とか、初発の旅順襲撃があまり効果を発揮していなかったという指摘。黄海海戦では、遠距離で撃ち合った結果、砲撃の効果が少なく、結果としてロシア戦艦を一隻も撃沈できなかったこと。これに対し、日本海海戦では、距離を詰めた結果、中口径の速射砲による榴弾がロシア戦艦に火災を起こさせ、乗員を殺傷し、それによって戦闘力を奪ったことが指摘される。
 魚雷攻撃の効果に対する厳しい見方とか、下瀬火薬が黄海海戦で欠陥を露呈したので日露戦争では外されたなんて記述は、意外な感じ。つーか、日露戦争でも下瀬火薬は使われたことになっているよなあ。あとは、日露戦争が終わった後での三笠の爆沈事件が、火薬の欠陥による自然発火が原因という話も。むしろ、日本語の文章では、乗員の発火信号用のアルコール飲酒時の事故による人為的要因の方が通説と言っていいように思うが。
 このあたりの良く語られていることに対する感覚の違いがいちばんおもしろいかもしれない。