飯山幸伸『弱小空軍の戦い方』

弱小空軍の戦い方―枢軸国と連合国に分かれた欧州小国の航空戦 (光人社NF文庫)

弱小空軍の戦い方―枢軸国と連合国に分かれた欧州小国の航空戦 (光人社NF文庫)

 第二次世界大戦に巻き込まれたベネルクスや北欧、東欧諸国の空軍がどのような飛行機を装備し、どのように戦ったかを描いている。構成としては、それぞれの国の戦いと、装備していた航空機の紹介が分かれているが、国ごとにまとめた方が分かりやすかったのではないかのではなかろうか。
 しかしまあ、連合国側に属して蹂躙されたオランダやポーランドあたりの悲惨さがなんとも。フォッカーD21やPZL・P・11や24、アヴィアB-534あたりで、何倍ものメッサーシュミットBf-109と戦うって、もう悲惨きわまるな。紹介されている飛行機も、大半が複葉かパラソル翼の練習機・偵察機の類だしな。結局、なんとか一線で使える戦闘機って、チェコのアヴィアB-135かルーマニアのIAR-80程度のものか。それも二流どころだよなあ。結局、枢軸側に着いた諸国はドイツからの供与機が主力という感じだし。
 あとは、両陣営のはざまで一線機を入手しにくかった中立のスウェーデン・スイスの航空機確保のための努力も印象的。スウェーデンは、この時代の苦闘から今に続く国産戦闘機の系譜を開始したわけだし。まあ、実際に戦争しなくて済んだ国だからこそ、そこそこの性能の戦闘機で妥協できたのだろうけど。
 フィンランド空軍の戦いは、この本の中でも別枠の華々しさだよなあ。二流どころの戦闘機を使って、ソ連空軍相手の大きな戦果をあげたってのは、やはり印象的。


 もうひとつ印象的なのは、1930年代後半以降の航空機技術の急速な発展。出来た時期には、それほど劣っていない航空機が、数年後には時代遅れになっているという。日本の軍用機をみても、この時代にあっというまに変わっているからなあ。