恐るべき欧州戦―第二次大戦知られざる16の戦場 (光人社NF文庫)
- 作者: 広田厚司
- 出版社/メーカー: 光人社
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: 文庫
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第一章はドイツのスパイを片っぱしから捕まえて二重スパイに仕立て上げ、無害な情報を送って騙し続けたって話。しかも、ドイツ側は、スパイ網が壊滅して、送られてくる情報がすべてイギリスの情報機関にコントロールされたものだってことに気付いていなかったという話で。こういうえげつないことをさせると、イギリスは強いなとしか。まあ、ヒトラーがイギリスへの友好姿勢をアピールするために戦前のスパイ活動が抑制されていたとか、対立が決定的になっておっとり刀でスパイを送り込んだとか、最初の段階でアレなんだけど。
第二章はヒトラーの総統本営の話。総統本営としてはヴォルフスシャンツェが有名だが、他にもあちこちに準備された本営用施設があったとか、鉄道による移動本営なんかが紹介されている。しかし、なんというかヒトラーの自己顕示欲のために、随分無駄なリソース使っている感じだよなあ。爆撃対策にコンクリートの防護施設とか、発電施設が必要だったそうだし。
第三章は先駆者であるハインケルのHe280には、機体にもエンジンにも、いろいろな不具合があって、結果として機体の設計が優れていたメッサーシュミットのMe262に敗れたという話。
残りでは、大西洋単独無着陸飛行に成功したチャールズ・リンドバーグが、アメリカの情報収集やその他の活動で果たした役割が興味深かった。戦前になんどか、ドイツの航空宇宙産業を視察し、その生産能力や技術に関する報告を米陸軍に送っていたことや、戦後のドイツ軍の航空宇宙技術資料の収集活動。人工心臓やゴダードのロケット開発、シコルスキーのヘリコプター開発への援助、戦時中のアメリカ軍の軍用機改良への貢献など多彩な活動をやっていたのだなと。大西洋横断飛行しか知らなかったから興味深かった。他にも諜報関係のエピソードが紹介されているが、捨て駒にされた方はたまらないよなあ…