高山文彦『大津波を生きる:巨大防潮堤と田老百年のいとなみ』

大津波を生きる―巨大防潮堤と田老百年のいとなみ

大津波を生きる―巨大防潮堤と田老百年のいとなみ

 こちらは一日で読了。
 明治、昭和、平成と繰り返し大津波に襲われ、大きな被害を出してきた田老の津波との向き合い方を描いた本。明治でいったん壊滅し、さらに半世紀ほどのちに昭和の大津波をうえて、多くの犠牲者を出す。それに対して、住民たちがどのように立ち向かったか。昭和の大津波後の復興における、後藤新平や復興院との関係、大防潮堤の建設などが取り上げられる。住民へのインタビューがなんとも。
 しかし、100年に一回以上の頻度で、町が全部流されるような津波に襲われると、どうしようもないな。明治と平成の大津波は、防潮堤を乗り越えるような規模だったわけだし。もともとの防潮堤は、引き波で沖合に流されるのを防いで、それで命を永らえた人もいるそうだし、目論見としては成功しているのではなかろうか。少なくとも、最初の意図は時間稼ぎだったわけだし。
 あと、復興に関して高地移転か現地復興かを明言しないあたりも、好感を持てる。ある程度以上大きな集落では、高地移転と言っても、適地を確保するのも難しいだろ。あと、山間に移転すれば、今度は土砂災害、地盤災害の危険があることも考える必要があると思う。山間に移転したら、今度は山体崩壊で集落ごと消えましたとか、泣くに泣けない。「ここより下に家を建てるな」で有名な姉吉集落のように、12戸程度の集落なら、高地移転も現実的な選択肢だろうけど、市レベルの定住地となると現地復興しかなかろう。
 あとは、関東大震災の時の「福田村事件」がエグい。差別とのかかわりや、有罪判決を受けた人が村長から市議会議員になっている話とか。しかし、9人殺して、判決が3-10年って、軽いな。