三上延『ビブリア古書堂の事件手帖4:栞子さんと二つの顔』

 江戸川乱歩マニアが残した金庫を開けてくれという依頼に応じて、あれこれと動く話。江戸川乱歩作品のうんちくが随所に現れてくるのが興味深い。江戸川乱歩作品は、家にあった何冊かを読んだだけかな。微妙に趣味が合わないところがあるというか。
 そして、物語も進展。母親の篠川智恵子が本人の前に姿を現し、また大輔もついに栞子さんに告白と。母親が何もかも捨てて本にのめり込む面を象徴し、大輔が社会性を維持しつづける方向性を象徴する。「二つの顔」にはそういう意味があるのかね。智恵子は大輔にロックオンしそうな感じだけど。
 あと、一貫して化け物のように描かれてきた智恵子が、エピローグで道を踏み外したマニアであると同時に、家族や周辺の人々への情もそれなりにもっていることも明らかにされる。
 しかし、智恵子が家を出た原因の

「本を追いかけて出ていったって話だ。正気じゃ手に入らねえような、とんでもねえ古書だとよ」

って、クトゥルフ脳の人間には『ネクロノミコン』か、それに準ずる魔導書としか思えないなw