戦友会研究会『戦友会研究ノート』

戦友会研究ノート

戦友会研究ノート

 どちらかというと、読むよりも引く本といった感じだな。「戦友会」と言うものを、さまざまな団体へだしたアンケート調査から、俯瞰的にまとめている。戦友会の類型や戦友会の形成から経過、終焉への流れ。活動内容、類似組織、などなど様々な側面から、戦友会がどのようなものかを描いている。
 悲惨な戦闘を経た部隊ほど、慰霊に重きを置いているというのは納得できるところ。


 文献メモ:
吉田裕『兵士たちの戦後史』岩波書店、2011asin:4000283723
国立歴史民族博物館編『近現代の戦争に関する記念碑:「非文献資料の基礎的研究」報告書』2003
 熊日新聞2013/3/17付の書評で紹介されている、原田敬一『兵士はどこへ行った』asin:4903426688あたりも、関連しそう。


 以下、メモ:

 旧日本軍に関する研究にとって、「通称号」は非常に重要である。現在最も詳しい資料は、元軍人軍属短期在職者協力協会の山崎達也さんが業務の必要からまとめられた『陸軍部隊文字符検索資料』(非売品)であるが、「靖国偕行文庫」(靖国神社図書館)でしか閲覧できない。公刊されることが切に望まれる。p.37

 メモ。こういう参考資料は積極的に整備されるべきだよなあ。

 発足までに長い時間を要するのは、名簿の確定に時間がかかるということもあるが、何より、戦後の生活の安定に相当の時間がかかったということである(→戦友会の成立時期)。戦後の生活にめどがつかなければ、戦友会どこではない。「昭和二二年六月一五日、東京近辺在住者(私を含めて)一六名、銀座で集まりましたが、未だ皆安定した生活に入れなかった時期であり、続いて会合を開くことはできませんでした」(自動車第三十三連隊第二中隊戦友会)。このような事情はかなり一般的なものだったと思われる。p.79

 戦後二十年ほどかけて形成されたものが多いらしい。

 全国戦友会連合会(戦友連)は、戦友会の全国的な組織と誤解されがちであるが、実際は、靖国神社国家護持運動を推進するために結成された戦友会の連合体である。
 靖国神社国家護持運動とは、戦後一宗教法人となった靖国神社を、戦前と同じように国が祭祀をおこなえるように特殊法人化しようとするもので、講和条約発効後にはじまるが、本格的な運動となるのは一九六〇年代になってからである。ただ、さまざまな政党、団体の利害や思惑が絡み、混乱をきわめることになる。そうしたなかで、運動の中核となることを求められた戦友会関係者が、一九六九年に結成したのが「戦友連」である。p.205