- 作者: 岩本馨
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2012/02/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 15回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
後半3分の1程度は、江戸のフロンティア、武家屋敷地の不足を埋める先としての甲府城下。島流し同然に放っておかれる為に、甲府に移された人々はものすごく荒れたようだが。
最近は、徳川綱吉の治世を、戦国時代までの殺伐とした社会から文治への転換として高く評価するようになっているようだが、本書の視点から見ると、気まぐれで付き合いにくい主君といった感じが濃厚にあるな。だからこそ、江戸時代から近代に入っても、悪い評判が流布され続けたわけだろう。政権外から、将軍の死去に伴って急遽、将軍になった人物。自己の権威を確立するために、粛清や急進的な政策を行ったという側面は濃厚にあるようだ。江東の撤退なんか、相当に無意味な政策だしな。
気位が高く他人に厳しいという、まるで綱吉のことを語っているかのような報告である。このことは綱吉と綱豊の人物像を考えるうえで無視できないものがある。つまり、これまで「生類憐れみの令」をはじめとする綱吉の政治があまりに面白おかしく紹介されてきたがゆえに、綱吉についてはその異常性だけがいたずらに強調されてきたきらいがなかったか。むしろ報告にあるような性格は、将軍の最近親という高い格式を有する人間特有のものとして理解されるべきことなのかもしれない。p.89-90
綱吉と家宣の性格の共通性。高い格式にありながら、実際には政権から疎外され、特にやることもない立場だと、人間屈折するものなのかもしれないな。