瀬尾つかさ『銀閃の戦乙女と封門の姫 1-3』

銀閃の戦乙女と封門の姫 (一迅社文庫)

銀閃の戦乙女と封門の姫 (一迅社文庫)

銀閃の戦乙女と封門の姫2 (一迅社文庫)

銀閃の戦乙女と封門の姫2 (一迅社文庫)

 とりあえず、最初から読みなおしてみた。一巻で出てきた、モンスターの「データセンター」と三巻で匂わされたゼノの脅威の間に、何か関係があるのだろうか。「まだおまえたちは、生れてはいけない。討伐されてもいけない。――にデータを渡してはいけない」(1巻p.272)の空白にはなにが入るのだろうか。あと、だんだんカイトがアホになっていくように見えるのは、やっぱ殴られ過ぎなのかね。
 あと、あちこち変な文章あって、一迅社では校正の専門職がいないのかなという感じが。特に、花梨家の血縁関係が入れ替わっているような。梨花の父親とカイトの母親が再婚、連れ子同士が兄妹になったが正しいはずだが、時々入れ替わっている時が。

「五年前、たったひとりの兄、大切な家族ができたと喜んだのに、母と義父が再婚したときにはもう、兄さんは向こうにいった後でしたね。(後略)」1巻p.16

 花梨梨花は、母のことをよく知らない。ものごころついたときには、父の手ひとつで育てられていた。幼い頃の彼女は、無邪気に「どうしてお母さんはいないの」と訊ねたものだ。父はそのたびに、笑って「母さんは遠い国で、平和のために働いているんだ」と答えた。1巻p.106

「はい、よろしくお願いします。父と義母には、不義理をしてしまいました」
 梨花とカイトは、この世界に出発する直前、家に電話を入れている。クァント=タンに赴くという梨花に対し、義理の母は「身体に気をつけなさい」といっただけだった。カイトの産みの親である彼女は、梨花の実の父親と同様、日本人だ。彼女がそのとき、どんなことを考えていたのかは、わからないが……。1巻p.113

 五年ほど前の夢だ。ときにカイト、十三歳。第七機士団の創設を目前とし、彼は一時、日本に帰郷していた。
 父が再婚するかもしれない、という話を聞き、ソーニャに事情を語ったところ「ならば一度、親子水入らずで語らい、わだかまりを解くがよい」と気をきかせてくれたのである。2巻p.57

 カイトたちはしばしの余暇を与えられていた。皆、故郷に帰り、羽を伸ばしていた。カイトも父方の実家であるトーマ家に滞在していた。当時はもう母は再婚していたため、日本に戻って会ったこともない新しい父と、連れ子の義妹と、つかの間の家族ごっこをする気にはなれなかったのである。2巻p.141

「ソーニャさまのお考え次第だけれど……あなたがたのお父様は、なんとおっしゃっているの」
「あのひとは、ほんとわからん。考えが読めん」
 カイトにとって義理の父親、梨花にとって実の父親たる人物は、幼児となった前妻を見て「ま、そういうこともあろう」と呟いただけだった。もともと、寛容というかいい加減というか理解が深いというか、いつも笑っていて正体がつかめない人物なのである。
「ただまあ、おれの母さんは、以前のエリカを知っていたみたいだ。『新しい人生で幸せになれるなら、たいへん喜ばしい』って同居を許してくれたくらいだから……」2巻p.208

 こうして見ると、一巻の16ページと二巻の57ページでは、カイトの実父と梨花の母親が結婚したと入れ替わっているな。あと、カイトの実父に関しては、まったく言及されていないな。


 あと、気になったところ。

「ま、よかろう。聞け、来訪者よ。わらわはソーニャ・エレイン周防・クァント=タン。このクァント=タンの第三王女じゃ。父は国王、母はエレイン周防と申す日本人。上には姉がふたり、兄がふたりおる」1巻p.68

 一巻の最初の方では、設定がぶれていたのかね。ガァド・エレインと周防某の娘がソーニャだと思っていたのだが。

 カイトはシャーロッテのそばに立つフレイに視線を移した。
「このダンジョンにおける純益の三パーセントを第七機士団に寄進していただけるそうです」
 表計算ソフトで作成されたとおぼしき数枚のグラフを見て、うっとりしている。そういえば機士団の会計はこいつが握っていたな、とカイトはいまさらながら思い出した。
「金に転んだか……」
「理想論だけでは軍団の維持ができませんので」
 せちがらい世の中であった。
「で、この姫さまを、おれが好きなようにまさぐっていい、と」
「ふぐう、むぐうっ、ふんぐうっ」
 ソーニャはひときわおおきく身もだえした。
「あら、お姉さま、とっても嬉しそうですわ」
「鬼です、ここには鬼しかいません……」
 梨花は、緊縛されたソーニャに興味津々のエリカを目隠ししつつ、戦慄していた。
 なお、フレイは申し訳なさそうにうつむき、黙って嵐が通りすぎるのを待っていた。3巻p.77-8

 で、フレイは結局、うっとりしていたのか、縮こまっていたのか…